この記事には,久留米大学医学部推薦入試過去問の詳しい解説が載っています。
過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!
解答はすでにこちらの記事で示しております。
令和3年度(2021)久留米大学医学部推薦入試数学[1]
たまに出るから困る?集合と必要条件・十分条件
難しいというほどでは無く,出題頻度もそう高くはない集合の分野は,いろいろなことを忘れがちです。たまにしか出ないからといっておろそかにしないようにしましょう。使われる記号はすべて完璧に覚えておこう
まず大前提として,使われる記号について確認しておきましょう。
試験直前に「先生,\(\cup\)と\(\cap,~\)どっちがどっちでしたっけ?」と聞いてくる受験生は毎年います。嘘みたいな話ですが,迷ってしまう記号など一つも無いように,確認しておきましょう。
よく質問されるものを以下に挙げておきます。
- 「\(\cup\)」と「\(\cap\)」
- 「\(\subset\)」と「\(\supset\)」
- 「\(\in\)」と「\(\ni\)」
- 「\(\in\)」と「\(\subset\)」の違い
いずれも,間違いの無いよう確認しておきましょう。
集合の包含関係を読み取る
では見ていきましょう。まずは,集合の関係を説明した文より,集合の包含関係を読み解いていきます。
条件2「集合\(B~\)の要素でないものでも集合\(C~\)の要素となるものが存在する」より\( ~\overline{B}\cap C \neq \phi \)
条件3「集合\(B~\)と集合\(C~\)の両方の要素であるものが存在する」より\( ~B \cap C \neq \phi \)
条件4「集合\(C~\)の要素はすべて集合\(A~\)の要素である。」より\(~A \supset C\)
条件5「集合\(D~\)の要素で集合\(C~\)の要素となるものは存在しない」より\(~D \cap C = \phi \)
条件6「集合\(D~\)の要素はすべて集合\(B~\)の要素である」より\( ~D \subset B \)
条件1と条件4より,集合\(A~\)に集合\(B~\)と集合\(C~\)が含まれていることがわかります。
条件3より,集合\(B~\)と集合\(C~\)はお互いに共通する要素もつことがわかります。
条件5と条件6より,集合\(D~\)は集合\(B \cap \overline{C}~\)に含まれていることがわかります。
これらと条件2より,以下の図のようになることがわかります。
※について説明しておきましょう。
※のところについては,要素が必ず存在します。逆に言えば,※以外のところは,要素が存在しないことがある,ということになります。
集合の記号で注意することは,\( P\subset Q~\)には,\(P=Q~\)の意味も含んでいることです。
不等号\(~a < b ~\)には\(~a=b~\)の意味は含んでいません。含むときは\(~a \leqq b~\)として区別しますよね。
しかし,高校数学の集合の記号では,\( P\subset Q~\)には,\(P=Q~\)の意味も含んでいるのです。
だったら,\(P \subseteqq Q~\)と表記して区別すれば良さそうなものですが,この表記は(高校数学においては)使われていません。
図を書いてしまえば,真偽の判定は簡単ですね。
- 命題「\(B \subset A~\)である」は真。よって\({0} \cdots \textrm{(答)} \)
- 命題「\(B \subset C~\)である」は偽。よって\({1} \cdots \textrm{(答)} \)
- 命題「\(B \cap D \subset A~\)である」は真。よって\({0} \cdots \textrm{(答)} \)
- 命題「\(C \cap D \neq \phi~\)である」は偽。よって\({1} \cdots \textrm{(答)} \)
- 命題「\(\overline{C \cup \overline{D}} \subset (A \cap B)~\)である」は「\((\overline{C} \cap D) \subset (A \cap B)~\)である」と同値であり,真。よって\({0} \cdots \textrm{(答)} \)
必要条件と十分条件を正しく見分けよう。ただし細かいことは気にせずに?
\( P\subset Q~\)が成り立っているとき,「集合\(P~\)は,集合\(Q~\)であるための十分条件」であり,「集合\(Q~\)は,集合\(P~\)であるための必要条件」です。
これがわかっていれば,必要条件と十分条件の判定は容易なはずですが・・・。
- 集合\(C~\)の要素であることは,集合\(A~\)の要素であるための,十分条件であるが必要条件ではない(\(A=C~\)となることはない)。よって\({1} \cdots \textrm{(答)} \)
- 集合\(A~\)の要素であることは,集合\(A~\)以外の集合の要素であるための必要条件である。十分条件かどうかは判断できないが,(\(A=(B\cup C \cup D)~\)の可能性もある)出題者が用意した答えは,おそらく\({2} \cdots \textrm{(答)} \) 。
\(2\)について,集合\(A~\)以外の集合,すなわち集合\(~B \cup C \cup D~\)は,集合\(A~\)に含まれています。ですから,集合\(A~\)は集合\(~B \cup C \cup D~\)であるための必要条件であるとわかります。
ただ,厳密に言うと「十分条件ではない」とは言い切れません。
なぜなら与えられた条件からは,\(A=(B\cup C \cup D)~\)の可能性を否定しきれません。その場合,集合\(A~\)は集合\(~B \cup C \cup D~\)であるための必要十分条件となります。
しかし,そこまで厳密に考えてしまうと,選べる選択肢がありません。ここはおそらく,出題者のミスだと思われます。
実は久留米大学は以前から出題ミスが多く,今回もまたか,という感じです。
ですから,「選択肢がない!」と慌てたりせずに,「ああ,これ出題ミスね」とさらっと選んで欲しいと思います。
出題者の名誉のために付け加えると,問題作成については高い能力を持っておられると評価しています。
ただ,おそらく作問を一人で押しつけられていて,チェック体制ができていないのだと思われます。
出題者と受験生双方のために,久留米大学は問題作成にもう少し力を入れて欲しいところです。
この問題のポイント
振り返ってみましょう。
この問題が解けるかどうかのポイントは、
- 集合で使われる記号の意味を完璧に理解しているか
- 問題文の条件から図を書くことができるか
- 必要条件と十分条件の判定ができるか
- 出題ミスの可能性も考えておこう
といったところです。
この記事があなたの実力アップの手助けになれば幸いです。
※誤植やミスを見つけた方は,ぜひお知らせください。