平成30年度(2018)久留米大学医学部一般入試数学過去問の解説授業(3/6)

過去問で学ぶ一般入試数学

[mathjax]

この記事には,久留米大学医学部一般入試過去問の詳しい解説が載っています。過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!

解答はすでにこちらの記事で示しております。

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平成30年度(2018)久留米大学医学部一般入試数学[3]

2次関数だ!という思い込み

どこかで見たことのありそうな問題ですね。最初は平方完成するだけです。
  1. \(a<0 \)とする。 \begin{align*} f(x)=a \left\{ x-\left( \frac{2-a}{a} \right) \right\}^2+\frac{2a^2+2a-4}{a} \end{align*} したがって,頂点の\(x~\)座標は\( \frac{2-a}{a}. \quad \cdots \text{(答)} \)

次に進みましょう。最初のポイントは,\(f(x)\)を「2次関数だ!」と思い込んでいないかどうかです。

\(a=0\)のとき,\(f(x)~\)は1次関数となります。

文字定数が使われているときは,その定数の値についてしっかりと吟味しましょう。形だけを見て2次関数だと思い込むのは危険です。

\(a=0~\)のとき,\(f(x)=-4x-2~\)となり,\(y=f(x)~\)は右下がりのグラフです。したがって最小となるのは\(~x=-2~\)のときです。

(2) \( \quad [1]~a=0\)のとき
\( \qquad f(x)=-4x-2~\)であるから,\(f(x)~\)の最大値は\(~f(-2)=6~\)である。

最大となるのは頂点だ!という思い込み

次は\(a < 0~\)のとき,つまり\(f(x)~\)が2次関数のときについて考えます。

ここでも,思い込みは禁物です。\(f(x)~\)が最大となるのはどこでしょうか。

「そりゃ頂点でしょう」と思って思考停止してはいけません。

定義域はすべての実数ではなく,\(-2 \leqq x \leqq 2~\)です。頂点がこの範囲にあるのかどうか,吟味しなければなりません。

軸の方程式\(x=\frac{2-a}{a}=\frac{2}{a}-1~\)は,\(a < 0\)であることから\(x=\frac{2}{a}-1 < -1~\)となります。したがって,軸が定義域の外側(左側)にあるときと,軸が定義域の内側にあるときで場合分けすることになります。

\(\quad [2]~a<0\)のとき
\( \qquad f(x)~\)は上に凸の2次関数であり,軸について \[ x=\frac{2-a}{a}=\frac{2}{a}-1 <-1 \]

\(\quad ~(i)~\) \(\frac{2-a}{a}<-2 \) すなわち \( -2 < a < 0~ \)のとき 
\( \qquad f(x)~\)の最大値は\(~f(-2)=3a+6~ \cdots [1]~\)である。

\(\quad ~(ii)~\) \(-2 \leqq \frac{2-a}{a}<-1~ \) すなわち \(~a \leqq -2~\)のとき 
\( \qquad f(x)~\)の最大値は\(~f(\frac{2-a}{2})=\frac{2a^2+2a-4}{a} ~\)である。

式\([1]\)は,\(~a=0~\)のとき\(~6~\)となるので、\(~a=0~\)のときも成り立つ。以上より

\( -2 < a \leqq 0 \) のとき\(~\) 最大値 \(~3a+6\) ,\( a \leqq -2~\) のとき \(~\) 最大値 \(\frac{2a^2+2a-4}{a} \quad \cdots \text{(答)} \)

(2)は出題ミスの可能性あり

ということで答えが出ました。\(a~\)の値によって最大値を2通り書くことになります・・・がここで,受験した人は戸惑ってしまいました。何故でしょうか。

数学の問題としておかしいところはなく,上記の解答でいいのですが,問題は解答用紙です。

このとき配られた解答用紙のこの問題の空欄が,とても狭いものだったのです。とても場合分けして2通りの答えを書くとは思えない大きさでした。

「俺が間違ったのかな?」そう思った受験生の中には,見直しした人もいたでしょう。結局その答えは間違っていないので,小さな文字で無理やり解答欄に書くしかなかったのです。

どうしてこんなことになったのでしょうか。

久留米大学はここについてはミスを認めていません。数学の問題としては成立しているからでしょう。

でも私は,きっと久留米大学の出題ミスだと確信しています。久留米大学の試験では,これまでにも数々の出題ミスがあったからです。試験当日に問題を解いた私は「またか!」と怒りにも似た気持ちを押さえられませんでした。

では,どんなミスだったのでしょうか。

考えられるのは,「解答欄を大きくするのを忘れた」か「最小値を求めさせようとして間違って最大値と書いてしまった」かのどちらかです。最小値だったら,軸の位置から答えが1通りに決まるからです。

どっちであったとしても,受験生にとっては迷惑な話です。

もっときちんとした問題作りをしてほしい,と強く思います。

久留米大学医学部のここ10年ほどの試験において,もう5,6回の出題ミスがあります。これはあまりにも不誠実だと思います。,/p>

(3)は大学側も認めた出題ミス

さて次は(3)ですが,これについては久留米大学は出題ミスと認め,全員に加点したことを発表しています。

そして「全員に加点したので合否に影響はなく,合格発表については訂正しない」ことも併せて発表しました。(影響がないわけないでしょう!と怒りたい)

出題のどこに問題があるか,ということについて解説しましょう。

まず問題文を見てみましょう。

(3) \( \quad \)方程式\(~f(x)=0~\)が実数解をもつとき,\(-2 \leqq x \leqq 2~ \)における\(~f(x)~\)の最小値は\(~a=\boxed{\Large\phantom{pppp}}\)のとき\(\boxed{\Large\phantom{pppp}}\)である。

関数\(f(x)\)は,\(x\)の値によって変化するのですから,「\(f(x)\)は\(x=\boxed{\Large\phantom{pppp}}\)のときに最小値\(\boxed{\Large\phantom{pppp}}\)をとる。」と書くのが普通です。

でも問題文では「\(a=\boxed{\Large\phantom{pppp}}\)のとき(最小値は)\(\boxed{\Large\phantom{pppp}}\)である」という文章になっていますので明らかにおかしいです。

1つ考えられるのは「\(x\)と\(a\)を間違えた」という場合です。単純な表記ミスですね。

もう一つ考えられるのは,\(f(x)\)の最小値が\(a\)の式になるので,あらためてこれを\(a\)の関数とみて,その最小値を求めさせようとした,という場合です。

そのときは,問題文が「\(~f(x)~\)の最小値を\(g(a)\)とする。\(g(a)\)は,\(~a=\boxed{\Large\phantom{pppp}}\)のとき,最小値\(\boxed{\Large\phantom{pppp}}\)をとる。」といった感じになります。

おそらくは後者ではないか,と思って解答を作成しました。

(3) \(\quad \) \(a=0~\)のとき,\(f(x)=-4x-2~\)であるから方程式\(~f(x)=0~\)は実数解をもつ。このとき,\(f(x)~\)の最小値は\(~f(2)=-10.~\)
\( \quad a<0~\)のとき,方程式\(~f(x)=0~\)が実数解をもつ条件は,頂点の\(~y~\)座標が\(~0~\)以上となることであるから \begin{align*} \frac{2a^2+2a-4}{a} \geqq 0 \quad &\text{かつ} \quad a<0\\ a^2+a-2 \leqq 0 \quad &\text{かつ} \quad a<0\\ (a+2)(a-1) \leqq 0 \quad &\text{かつ} \quad a<0\\ -2 \leqq a < 0 \end{align*} このとき,軸の位置に注意すると\(~f(x)~\)の最小値は \begin{align} f(2)=11a-10 \cdots [2] \end{align}

式\([2]\)は\(~a=0~\)とすると\(~-10~\)となるので,\(a=0~\)のときも成り立つ。よって\(-2\leqq a \leqq 0~\)のとき,\(~f(x)~\)の最小値は\(~11a-10~\)となる。

これを\(~a~\)の関数\(~g(a)=11a-10~\)としたとき,\(g(a)~\)は\(~a=-2~ \)のとき,最小値\(~g(-2)=-32~ \cdots \)(答)をとる。

全員に加点すればいい,というわけではない

この問題が解けない人にとっては,問題文がどうあれ解けないのですから影響はないでしょう。全員加点されるのですからラッキー!というところでしょうか。

また,あまり深く考えずに,自分の思い込みでサラッと解いた人にとっても,この問題で時間を使っていないので影響はないでしょう。

でも最も影響を受けてしまったのは,真面目に勉強してきて,しっかりと問題を読み込んで,何かおかしいと気づきながらも,悩んでこの問題に時間を使ってしまった人です。

出題ミスだと気づけばいいのですが,普通はそんなこと思いもしません。それに,ミスだと分かったとしても,結局何を書けばいいのか悩むことになります。その時点で全員加点されることになることはわからないのですから。

結果として,真面目な人ほど時間を浪費して損をし,問題文がおかしいことに気付かない程度の力しかない人は得をしたことになります。そんな試験でありながら「合否に影響はない」と言い切る大学側の姿勢には疑問を感じます。

最近,京都大学や大阪大学などの有名大学において出題ミスが発覚し,理事長などが深々と謝罪する姿が報道されたりしています。真剣に試験に臨んでいる若者のことを考えれば,大人が真剣に向き合わなくてどうするのでしょうか。

前述したように,久留米大学の試験ではしょっちゅう出題ミスがありますが,ほとんど謝罪せず,頬かむりしているのが現状です(今回一部でも認めたのは数少ない事例です!)。

いっそのこと,どこかマスコミが取材してくれないでしょうか?医学部という大事な人材を育てるはずの大学において,いい加減な入試が行われていることを報道することは,公益に結び付くと思うのですが。それくらいしないと久留米大学は真剣には反省しないと思います。マスコミの皆様,出題ミスのデータは提供しますよ(笑)。

真面目な話,医師になりたいという夢を持ち,頑張っている若者のためにも,問題作成には真剣に取り組んでほしいと切に願います。

この問題のポイント

振り返ってみましょう。

この問題が解けるかどうかのポイントは、

  1. \(f(x)~\)が2次関数の場合と1次関数の場合があることに気付けるか
  2. \(a\)の値によって適切に場合分けできるか
  3. 久留米大学は出題ミスが多いことを知っておこう
といったところでしょうか。最後のを付け加えなければならないのは悲しいですね・・・。

 

 

※誤植やミスを見つけた方は,ぜひお知らせください。

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