[mathjax]
この記事には,久留米大学医学部推薦入試過去問の詳しい解説が載っています。
過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!
解答はすでにこちらの記事で示しております。
令和02年度(2020)久留米大学医学部推薦入試数学[5]
一次不定方程式は答だけならすばやく解こう
一次不定方程式の解法は,教科書で習ったとおりであれば,次のような解答になります。もちろん,記述式ならこのように書くべきでしょう。まずはそれを示します。
- \(11x+4y=1 \cdots [1]\)を満たす整数の組の一つとして,\(x=-1,~y=3\)があるので \begin{align*} 11\cdot (-1)+4\cdot 3=1. \cdots [2] \end{align*} \([1]-[2]\)より \begin{align*} 11(x+1)+4(y-3)=& 0 \\ 11(x+1)=& 4(3-y) \end{align*} \(11\)と\(4\)は互いに素である整数なので,整数\(k\)を用いて \begin{align*} x+1=& 4k,~3-y=11k \\ x=& 4k-1,~y=-11k+3 \end{align*} と表せる。よって \begin{align*} |2x-y|=&|2(4k-1)-(-11k+3)| \\ =&|19k-5| \end{align*} となり,\(|2x-y|\)は\(k=0\)のとき最小値\(5 \quad \cdots \text{(答)}\)をとる。
ただし,今回久留米大学医学部の推薦入試は,マーク式となりました。
だったら上記のように丁寧に解く必要はなく,一般解を求めるところまでは次のように解くことができます。
「何それ?」と思った人もいるでしょう。
一次不定方程式は,特殊解が分かったら一般解は上記のようにすぐに分かるのです。
手順は簡単,「特殊解に互いの係数をたす(または引く)」です。詳しく説明しましょう。
まず\(x,~y\)について,特殊解はそれぞれ\(-1,~3\)です。これが\(x,~y\)それぞれの基準となります。
次に,元の不定方程式をチェックします。\(x\)の項と\(y\)の項の間が\(+\)なのか\(-\)なのか,そしてそれを除いた\(x,~y\)の係数はそれぞれ何か,を確認しましょう。
あとは簡単。\(x\)には,基準となる特殊解\(-1\)に\(y\)の係数(今回は4)を\(k\)個たし(または引き),\(y\)には,基準となる特殊解\(3\)に\(x\)の係数(今回は11)を\(k\)個引き(またはたし)ます。
たすか引くかは逆でもいいのですが,\(x\)の項と\(y\)の項の間が\(+\)のときは,\(x\)と\(y\)を足すと引くの組合せにし,\(x\)の項と\(y\)の項の間が\(-\)のときは,どちらも足すかどちらも引きます。
これを使えば,簡単に答が出せるでしょう?
これは意外に使えるテクニックなので覚えておいて損はないと思います。かなり時間の短縮につながります。
でも疑問に思いますよね?なぜそんなやり方が成り立つのか。
理由はちゃんとあります。ここでは説明しませんので,自分で考えてみて下さい。
ヒントは「一次不定方程式の一般解は,直線が通る格子点に一致する」です。
整数問題の王道,積の形を利用する
整数問題を解くときに,心がけていることはあるでしょうか。
私は整数問題の指導のときに,必ず生徒に伝えていることがあります。
それは,「整数問題には主に3つの解法がある」ということです。その3つとは
- 積の形を利用する
- 大小関係(不等式)の利用
- 余りの利用
です。いずれも整数問題ではよく使う手法であり,組み合わせることも多いです。
整数問題を解く過程は,これらの手法を用いて答えの候補を絞り込み,あとは個別に調べていく,という流れになります。
(2)与えられた等式の両辺に\(2xy\)をかけて,次のように変形する。
\begin{align*} \dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}=&\dfrac12 \\ 2y+2x=&xy \\ xy-2x-2y=&0 \\ (x-2)(y-2)=&4 \quad \cdots \text{(答)} \end{align*}\(x,~y\)は自然数なので\(x-2 \geqq -1,~y-2 \geqq -1.\)
よって等式を満たすのは
\begin{align*} (x-2,~y-2)=(1,~4),~(2,~2),~(4,~1) \\ \therefore (x,~y)=(3,~6),~(4,~4),~(6,~3) \end{align*}したがって,このうち\(x\)の値が最も大きい組は\(x=6,~y=3. \quad \cdots \text{(答)} \)
“整数”には負の数も含まれていることに注意しよう
後半にはちょっと注意が必要です。
基本的には,前半で求めた\(x,~y\)の組を\(a^x=b^y=4096(=2^{12})\)に代入し,その式を満たす\(a,~b\)を求めるだけですが,負の数に気付かないと間違ってしまいます。
さらに,\(a^x=b^y=4096(=2^{12})\)を満たす整数\(a,~b\)の組を考える。
\((x,~y)=(3,~6)\)のとき
\(a^x=b^y=4096\)より\(a^3=b^6=2^{12}.\)これを満たすのは \begin{align*} (a,~b)=(16,~4),~(16,~-4) \end{align*} の2組である。
\((x,~y)=(4,~4)\)のとき
\(a^x=b^y=4096\)より\(a^4=b^4=2^{12}.\)これを満たすのは \begin{align*} (a,~b)=(8,~8),~(8,~-8),~(-8,~8),~(-8,~-8) \end{align*} の4組である。
\((x,~y)=(6,~3)\)のとき
\(a^x=b^y=4096\)より\(a^6=b^3=2^{12}.\)これを満たすのは \begin{align*} (a,~b)=(4,~16),~(-4,~16) \end{align*} の2組である。
以上より,整数\(a,~b\)の組は全部で\(8\text{個} \quad \cdots \text{(答)}\)ある。
整数問題の中には,答えが自然数の範囲でおさまることも多いので,つい正の数のみで答えてしまった受験生も多かったようです。
問題文のどこにも「正の整数」などとは書かれていないので,負の数も含めて答を出しましょう。
この問題のポイント
振り返ってみましょう。
この問題が解けるかどうかのポイントは、
- 一次不定方程式の解法をマスターしているか
- 積の形を利用することができるか
- 負の整数を見落とさずに解くことができるか
といったところです。数字だけでなく,問題文にある日本語についても,見落とさないよう注意しましょう。
※誤植やミスを見つけた方は,ぜひお知らせください。