令和04年度(2022)久留米大学医学部推薦入試数学過去問の解説授業(4/5)

推薦入試

この記事には,久留米大学医学部推薦入試過去問の詳しい解説が載っています。

過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!

解答はすでにこちらの記事で示しております。

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令和04年度(2022)久留米大学医学部推薦入試数学[4]

平面ベクトルの延長で解ける!空間ベクトル

この問題は空間ベクトルの問題です。

しかし空間ベクトルの問題は,平面ベクトルの延長で解けます。

特にこの問題は,3点O,A,Bがすべて\(xy\)平面上にあるため,前半は完全に平面ベクトルの問題となっています。 \[ 「空間ベクトルだ,きっと難しいんだ・・・」 \] と過剰に恐れず,じっくり解きほぐしていきましょう。

\(s,~t\)をまとめれば,定番の問題に

点Rについて与えられた式が \[ \overrightarrow{\mathrm{OR}}=(s+t)\overrightarrow{\mathrm{OA}}+(t+1)\overrightarrow{\mathrm{OB}} \] なので,ちょっと戸惑うかもしれません。

でも,\(s\)と\(t\)をまとめてみましょう。 \[\overrightarrow{\mathrm{OR}}=s\overrightarrow{\mathrm{OA}}+t(\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}})+\overrightarrow{\mathrm{OB}} \]

最後の\(+\overrightarrow{\mathrm{OB}}\)は平行移動するだけなので,あとで考えましょう。

\((\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}})\)を\(\overrightarrow{\mathrm{OD}}\)とおけば・・・ほら,よく見る”存在範囲”の問題ですね。

  1. 3点\(\textrm{O},~\textrm{A},~\mathrm{B}\)はすべて\(z~\)座標が\(0\)であり,\(xy\)平面上の点であることがわかる。また,式の形から点\(\textrm{R}\)も\(xy\)平面上の点であることがわかる。
    点\(\textrm{R}\)について,\( \overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}}=\overrightarrow{\mathrm{OD}}=(4,~0,~0)\)とおくと, \begin{align*} \overrightarrow{\mathrm{OR}}=& (s+t)\overrightarrow{\mathrm{OA}}+(t+1)\overrightarrow{\mathrm{OB}} \\ =& s\overrightarrow{\mathrm{OA}}+t(\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}})+\overrightarrow{\mathrm{OB}} \\ =& s\overrightarrow{\mathrm{OA}}+t\overrightarrow{\mathrm{OD}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}} \end{align*} 線分\(\textrm{OA},~\textrm{OD}\)の中点をそれぞれ\(\textrm{M}(1,~-1,~0),~\textrm{N}(2,~0,~0)\)とする。
    \(s \geqq 0,~t \geqq 0,~\frac12 \leqq s+t \leqq 1~\)より,\(s\overrightarrow{\mathrm{OA}}+t\overrightarrow{\mathrm{OD}}\)で表される点の存在する範囲は,四角形\(\textrm{ADNM}\)の周上および内部である。点\(\textrm{R}\)の存在する領域は,この四角形\(\textrm{ADNM}\)を下図のように平行移動したものである。 よって,点\(\textrm{R}\)が存在する範囲は四角形\(\quad \cdots \text{(答)} \)であり,その面積は\(\textrm{△OAD}\)の面積の\(\frac34\)倍である。
    求める面積\(S\)は \begin{align*} S=& \frac34 \mathrm{△OAD} \\ =& \frac34 \cdot \frac12 \cdot 4 \cdot 2 \\ =& 3 \qquad \cdots \text{(答)} \end{align*}

\(+\overrightarrow{\mathrm{OB}}\)によって平行移動しただけなので,点Rの存在領域は四角形ADNMと同じ大きさになります。

三角形OADと三角形OMNの相似比は\(2:1\)であり,面積比は\(4:1\)となります。

したがって,求める面積は三角形OADの\(\frac34\)倍となります。

座標が自然数なので,面積の計算もしやすいですね。図を書けば計算すら必要ありません。

求める立体は,四角形を\(z\)軸方向に平行移動するだけ

点Pについてのベクトル方程式は,点Rのベクトル方程式に\(+u\overrightarrow{\mathrm{OC}} (0 \leqq u \leqq 2)\)が加わっただけです。

ということは,点Rの存在範囲を,\(\overrightarrow{\mathrm{OC}}\)方向に平行移動するだけです。

しかも\(\overrightarrow{\mathrm{OC}}=(0,~0,~1)\)ですから,まっすぐ\(z\)軸方向に2だけ動かします。

高さが2となりますので,体積を求めるのは簡単ですね。

(2)

点\(\textrm{P}\)について, \begin{align*} \overrightarrow{\mathrm{OP}}=& (s+t)\overrightarrow{\mathrm{OA}}+(t+1)\overrightarrow{\mathrm{OB}} +u\overrightarrow{\mathrm{OC}} \\ =& \overrightarrow{\mathrm{OR}} +u\overrightarrow{\mathrm{OC}} \end{align*}

\(\overrightarrow{\mathrm{OC}}=(0,~0,~1),~0 \leqq u \leqq 2~\)であるから,点\(\textrm{P}~\)の存在範囲は,(1)で求めた四角形を底面として,それを\(z~\)軸方向に0から2まで平行移動したときの通過領域である。

その立体の高さは2であるから,求める体積は \begin{align*} 3 \times 2=6 \qquad \cdots \text{(答)} \end{align*}

直角に気付かないと厳しいかも

最後の問題は,まず点Qの存在範囲が球になることに気付かなければなりません。

以下の解答のように式を変形してもいいし,\(\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=(x,~y,~z)\) とおきかえて成分を計算して球の方程式を求めてもいいので,ここは確実に解きましょう。

点\(\textrm{Q}\)について,\(\overrightarrow{\mathrm{OE}}=\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}}+2\overrightarrow{\mathrm{OC}}=(4,~0,~2)\)とおくと,\(|\overrightarrow{\mathrm{OE}}|^2=20~\)であるから \begin{align*} |\overrightarrow{\mathrm{OQ}}|^2-2(\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{OQ}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{OQ}}+2\overrightarrow{\mathrm{OC}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{OQ}})+19\leqq 0 \\ |\overrightarrow{\mathrm{OQ}}|^2-2(\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}}+2\overrightarrow{\mathrm{OC}})\cdot \overrightarrow{\mathrm{OQ}}+19\leqq 0 \\ |\overrightarrow{\mathrm{OQ}}|^2-2\overrightarrow{\mathrm{OE}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{OQ}}+19\leqq 0 \\ |\overrightarrow{\mathrm{OQ}}|^2-2\overrightarrow{\mathrm{OE}}\cdot \overrightarrow{\mathrm{OQ}}+20\leqq 1 \\ |\overrightarrow{\mathrm{OQ}}-\overrightarrow{\mathrm{OE}}|^2 \leqq 1 \end{align*}

よって点\(\textrm{Q}~\)は,中心が\(\textrm{E}\)で半径が1である球の球面および内部である。

点\(\textrm{P}\)が存在する範囲の四角柱の点\(\textrm{E}\)の周りの辺はすべて垂直に交わっている。

よって,点\(\textrm{P}\)が存在する範囲と点\(\textrm{Q}\)が存在する範囲の共通部分は,半径1の球の体積の\(\frac18\)である。

よって求める体積は \begin{align*} \frac{4\pi}{3}\times \frac18=\frac{\pi}{6}. \qquad \cdots \text{(答)} \end{align*}

後半は(2)で求めた立体と,球の共通部分を求めるのだが,立体の頂点と球の中心が一致していること,その立体の頂点の周りの辺が,互いに垂直になっていることに気付かないと,余計な計算で時間を浪費しそうです(ここまで,きちんと図を書いてきた人なら直角には気付けると思います)。

そこに気付けば,求めるものは球の体積の\(\frac18\)であることがすぐにわかります。

このように,直角に気付けば簡単な問題というのはたくさんあります。もし「難しい問題だなあ」と思ったときは,直角を見落としていないか,調べるクセをつけておきましょう。

この問題のポイント

振り返ってみましょう。

この問題が解けるかどうかのポイントは、

  1. 平面ベクトルの存在範囲を求めることができるか
  2. 平行移動に気付けるか
  3. 立体の直角を見落とさずに解けるか
といったところです。見た目は難しいのですが,解いてみるとそうでもありません。頑張って理解しましょう。

※誤植やミスを見つけた方は,ぜひお知らせください。

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