この記事には,久留米大学医学部推薦入試過去問の詳しい解説が載っています。
過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!
解答はすでにこちらの記事で示しております。
令和05年度(2023)久留米大学医学部推薦入試数学[2]
すべてのカードを区別し,分母と分子の数え方を統一しよう
よって,取り出された3枚のカードがすべて正の値である確率は
\begin{align*}
\frac{_{6}\textrm{C}_{3}}{_{12}\textrm{C}_{3}}=\frac{20}{220}=\frac{1}{11} \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}
取り出された3枚のカードのうち,少なくとも1つが負の値である確率は
\begin{align*}
1-\frac{1}{11}=\frac{10}{11} \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}
(2) \(S=-9~\)となるのは3枚とも\(~-3~\)のカードを取り出したときであり,\(S=9~\)となるのは3枚とも\(~3~\)のカードを取り出したときである。
よって,\(S=-9~\)または\(~S=9~\)となる確率は
\begin{align*}
\frac{_{3}\textrm{C}_{3} +_{3}\textrm{C}_{3}}{_{12}\textrm{C}_{3}}=\frac{2}{220}=\frac{1}{110} \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}
対称性を利用することで,解く時間を短縮しよう
まずは,\(S=0~\)となる確率を求めます。そのためには,\(S=0~\)となるのは,取り出した3枚のカードがどんな組み合わせとなるのか,分類する必要があります。
\begin{align*}
\left\{ 1,~2,~-3\right\} または \left\{ -1,~-2,~3\right\}
\end{align*}
のときである。
それぞれ\(~1 \times 2 \times 3 =6~\)通りであるから,\(S=0~\)となる確率は
\begin{align*}
\frac{6 \times 2}{_{12}\textrm{C}_{3}}=\frac{12}{220}=\frac{3}{55} \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}
\(\left\{ 1,~2,~-3\right\} \)の組の場合,\(1~\)のカードは1枚,\(2~\)のカードは2枚,\(-3~\)のカードは3枚あるので,取り出し方は\(~1 \times 2 \times 3 =6~\)通りあります。同様に,\(\left\{ -1,~-2,~3\right\} ~\)の組も6通りです。
ですから,\(S=0~\)となる組合せは\(~6 \times 2~\)通りとなります。
ここで,「カードを並べ替えることを考えて,\(3!~\)をかけなければならないのではないかな?」と思った人はいませんか?
よくある勘違いですが,その必要はありません。
なぜなら,起こりうるすべての事象の数,つまり分母の数を,_{12}\textrm{C}_{3}で計算していたはずです。これはカードの組合せであり,カードを取り出す順序のことは考えていません。
分子を数えるときは,分母のうち何通りかを数えるのですから,当然カードの順序を考える必要はありません。
言われてみれば当たり前なのですが,分母と分子の数え方を統一していない人は意外と多いです。気をつけましょう。
よって\(S > 0~ \)となる確率は
\begin{align*}
\left( 1-\frac{3}{55}\right) \times \frac12 =\frac{26}{55} \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}
ここは,差がつくところかもしれません。
3枚のカードに書かれた数字の和\(~S~\)は,\(S=0,~S > 0,~S < 0~\)のいずれかであり,\(S>0\)となる確率と\(S<0\)となる確率は同じになります。
なぜなら,1と\(~-1~\)のカードはどちらも1枚,2と\(~-2~\)のカードはどちらも2枚,3と\(~-3~\)のカードはどちらも3枚となっています。
プラスとマイナスを入れ替えて考えてみれば,\(S>0~\)となる確率と\(~S<0~\)となる確率が同じになることがわかります。
この,カードの対称性に気付けば,\(S \ne 0~\)の確率に\(\frac12\)をかけることで,\(S > 0~\)となる確率を計算することができます。
直接計算することに比べれば,かなり楽になることがわかると思います。対称性が利用できないかどうか,常に頭に入れておきましょう。
条件付き確率だけど,難しくはない
「条件付き確率は苦手です」という生徒は多いですが,この問題については難しくありません。
「箱の中ら同時に3枚のカードを取り出したら\(~S=0~\)」となったとき,残り9枚のカードから2枚を取り出します。時系列に沿っているので公式を使う必要もなく,単純に残っているカードのことだけ考えればOKです。
意識しすぎないように,落ち着いて解きましょう。
(4) \(S=0~\)であったとする。
はじめに取り出された3枚のカードの組が\(\{1,~2,~-3\}\)のとき,残った9枚のカードは
\[
-1,~2,-2,-2,~3,~3,~3,-3,-3
\]
であり,はじめに取り出された3枚のカードの組が\(\{-1,~-2,~3\}\)のとき,残った9枚のカードは
\[
1,~2,~2,-2,~3,~3,-3,-3,-3
\]
である。どちらにしても,残った9枚のカードから2枚取り出して数字の和が0となるのは,「2と\(-2\)」または「3と\(-3\)」を取り出すときであり,その場合の数は\(~1 \times 2 + 2 \times 3 =8~\)通りである。
したがって,求める条件付き確率は
\begin{align*}
\dfrac{8}{_{9}\textrm{C}_{2}}=\frac29 \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}
ちなみに,公式通りに解こうとすると,だいたい次のようになります。複雑になるだけなので,あまりオススメはしません。
箱から3枚のカードを取り出したとき,\(S=0~\)である事象を\(~A~\)とする。また,箱から3枚のカードを取り出したあと,残った9枚のカードから2枚を取り出し,最後の2枚のカードの数字の和が\(~0~\)である事象を\(~B~\)とする。
求める条件付き確率は
\[
P_A(B)=\dfrac{P(A \cap B)}{P(A)}
\]
である。
はじめに取り出された3枚のカードの組が\(\{1,~2,~-3\}\)のとき,残った9枚のカードは
\[
-1,~2,-2,-2,~3,~3,~3,-3,-3
\]
であり,はじめに取り出された3枚のカードの組が\(\{-1,~-2,~3\}\)のとき,残った9枚のカードは
\[
1,~2,~2,-2,~3,~3,-3,-3,-3
\]
である。どちらにしても,残った9枚のカードから2枚取り出して数字の和が0となるのは,「2と\(-2\)」または「3と\(-3\)」を取り出すときであり,その場合の数は\(~1 \times 2 + 2 \times 3 =8~\)通りである。
したがって,求める条件付き確率は
\begin{align*}
\dfrac{\frac{3}{55} \times \frac{8}{_{9}\textrm{C}_{2}}}{\frac{3}{55}}= & \frac{8}{_{9}\textrm{C}_{2}} \\
= & \dfrac29 \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}
この問題のポイント
振り返ってみましょう。
この問題が解けるかどうかのポイントは、
- 適切に場合分けして数えることができるか
- 対称性を利用できるか
- 条件付き確率を理解しているか
といったところです。
完答したい問題です。苦手な人はしっかり復習しましょう。
※誤植やミスを見つけた方は,ぜひお知らせください。
丁寧な場合分けが必要になるので,いい訓練になります。
対称性を利用することの良さも実感できて,一石二鳥です。
場合の数や確率に強くなるためには,いろいろな解法を試してみましょう。