令和05年度(2023)久留米大学医学部推薦入試数学過去問の解説授業(2/4)

過去問で学ぶ推薦入試数学

この記事には,久留米大学医学部推薦入試過去問の詳しい解説が載っています。

過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!

解答はすでにこちらの記事で示しております。

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令和05年度(2023)久留米大学医学部推薦入試数学[2]

すべてのカードを区別し,分母と分子の数え方を統一しよう

箱の中からカードを取り出すときの確率を求める問題です。
 
(1)  12枚のカードのうち,数字が正の値のカードは6枚である。
     よって,取り出された3枚のカードがすべて正の値である確率は
\begin{align*}
\frac{_{6}\textrm{C}_{3}}{_{12}\textrm{C}_{3}}=\frac{20}{220}=\frac{1}{11} \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}
     取り出された3枚のカードのうち,少なくとも1つが負の値である確率は
\begin{align*}
1-\frac{1}{11}=\frac{10}{11} \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}      

(2)   \(S=-9~\)となるのは3枚とも\(~-3~\)のカードを取り出したときであり,\(S=9~\)となるのは3枚とも\(~3~\)のカードを取り出したときである。
    よって,\(S=-9~\)または\(~S=9~\)となる確率は
\begin{align*}
\frac{_{3}\textrm{C}_{3} +_{3}\textrm{C}_{3}}{_{12}\textrm{C}_{3}}=\frac{2}{220}=\frac{1}{110} \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}
何回か取り出す反復試行ではなく,取り出す回数は1回だけの問題です。
 
箱の中には同じ数字が書かれたカードもありますが,すべて区別して考えます。箱の中にある12枚のカードから3枚を取り出す場合の数は,\(_{12}\textrm{C}_{3}\)通りであり,これが分母となります。
 
また,「3枚のうち少なくとも1つが負の値である」の余事象は「3枚すべて正の値である」となります。
 
ここまでは比較的解きやすいと思いますので,なるべく時間をかけずに解きましょう。

対称性を利用することで,解く時間を短縮しよう

まずは,\(S=0~\)となる確率を求めます。そのためには,\(S=0~\)となるのは,取り出した3枚のカードがどんな組み合わせとなるのか,分類する必要があります。

\(S=0~\)となるのは,取り出した3枚のカードの組が
\begin{align*}
\left\{ 1,~2,~-3\right\}  または \left\{ -1,~-2,~3\right\}
\end{align*}

のときである。
それぞれ\(~1 \times 2 \times 3 =6~\)通りであるから,\(S=0~\)となる確率は

\begin{align*}
\frac{6 \times 2}{_{12}\textrm{C}_{3}}=\frac{12}{220}=\frac{3}{55} \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}

\(\left\{ 1,~2,~-3\right\} \)の組の場合,\(1~\)のカードは1枚,\(2~\)のカードは2枚,\(-3~\)のカードは3枚あるので,取り出し方は\(~1 \times 2 \times 3 =6~\)通りあります。同様に,\(\left\{ -1,~-2,~3\right\} ~\)の組も6通りです。

ですから,\(S=0~\)となる組合せは\(~6 \times 2~\)通りとなります。

ここで,「カードを並べ替えることを考えて,\(3!~\)をかけなければならないのではないかな?」と思った人はいませんか?

よくある勘違いですが,その必要はありません。

なぜなら,起こりうるすべての事象の数,つまり分母の数を,_{12}\textrm{C}_{3}で計算していたはずです。これはカードの組合せであり,カードを取り出す順序のことは考えていません。

分子を数えるときは,分母のうち何通りかを数えるのですから,当然カードの順序を考える必要はありません。

言われてみれば当たり前なのですが,分母と分子の数え方を統一していない人は意外と多いです。気をつけましょう。

「1と\(-1\)」「2と\(-2\)」「3と\(-3\)」のカードの枚数はそれぞれ同じなので,\(S > 0~\)となる確率と\(~S < 0~ \)となる確率は同じである。
よって\(S > 0~ \)となる確率は
\begin{align*}
\left( 1-\frac{3}{55}\right) \times \frac12 =\frac{26}{55} \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}

ここは,差がつくところかもしれません。

3枚のカードに書かれた数字の和\(~S~\)は,\(S=0,~S > 0,~S < 0~\)のいずれかであり,\(S>0\)となる確率と\(S<0\)となる確率は同じになります。

なぜなら,1と\(~-1~\)のカードはどちらも1枚,2と\(~-2~\)のカードはどちらも2枚,3と\(~-3~\)のカードはどちらも3枚となっています。

プラスとマイナスを入れ替えて考えてみれば,\(S>0~\)となる確率と\(~S<0~\)となる確率が同じになることがわかります。

この,カードの対称性に気付けば,\(S \ne 0~\)の確率に\(\frac12\)をかけることで,\(S > 0~\)となる確率を計算することができます。

直接計算することに比べれば,かなり楽になることがわかると思います。対称性が利用できないかどうか,常に頭に入れておきましょう。   

  \(S > 0~\)となる確率を,直接計算する事にもチャレンジしてみましょう。

丁寧な場合分けが必要になるので,いい訓練になります。

対称性を利用することの良さも実感できて,一石二鳥です。

場合の数や確率に強くなるためには,いろいろな解法を試してみましょう。       

条件付き確率だけど,難しくはない

「条件付き確率は苦手です」という生徒は多いですが,この問題については難しくありません。

「箱の中ら同時に3枚のカードを取り出したら\(~S=0~\)」となったとき,残り9枚のカードから2枚を取り出します。時系列に沿っているので公式を使う必要もなく,単純に残っているカードのことだけ考えればOKです。

意識しすぎないように,落ち着いて解きましょう。

 

(4) \(S=0~\)であったとする。
はじめに取り出された3枚のカードの組が\(\{1,~2,~-3\}\)のとき,残った9枚のカードは
\[
-1,~2,-2,-2,~3,~3,~3,-3,-3
\]
 であり,はじめに取り出された3枚のカードの組が\(\{-1,~-2,~3\}\)のとき,残った9枚のカードは
 \[
1,~2,~2,-2,~3,~3,-3,-3,-3
\]
 である。どちらにしても,残った9枚のカードから2枚取り出して数字の和が0となるのは,「2と\(-2\)」または「3と\(-3\)」を取り出すときであり,その場合の数は\(~1 \times 2 + 2 \times 3 =8~\)通りである。
 したがって,求める条件付き確率は
\begin{align*}
\dfrac{8}{_{9}\textrm{C}_{2}}=\frac29 \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}   

ちなみに,公式通りに解こうとすると,だいたい次のようになります。複雑になるだけなので,あまりオススメはしません。

 

箱から3枚のカードを取り出したとき,\(S=0~\)である事象を\(~A~\)とする。また,箱から3枚のカードを取り出したあと,残った9枚のカードから2枚を取り出し,最後の2枚のカードの数字の和が\(~0~\)である事象を\(~B~\)とする。
求める条件付き確率は
\[
P_A(B)=\dfrac{P(A \cap B)}{P(A)}
\]
である。
はじめに取り出された3枚のカードの組が\(\{1,~2,~-3\}\)のとき,残った9枚のカードは
 \[
-1,~2,-2,-2,~3,~3,~3,-3,-3
\]
 であり,はじめに取り出された3枚のカードの組が\(\{-1,~-2,~3\}\)のとき,残った9枚のカードは
\[ 
1,~2,~2,-2,~3,~3,-3,-3,-3
\]
である。どちらにしても,残った9枚のカードから2枚取り出して数字の和が0となるのは,「2と\(-2\)」または「3と\(-3\)」を取り出すときであり,その場合の数は\(~1 \times 2 + 2 \times 3 =8~\)通りである。
したがって,求める条件付き確率は
\begin{align*}
\dfrac{\frac{3}{55} \times \frac{8}{_{9}\textrm{C}_{2}}}{\frac{3}{55}}= & \frac{8}{_{9}\textrm{C}_{2}} \\
                = & \dfrac29 \quad \cdots \text{(答)}
\end{align*}

 

 この問題のポイント

振り返ってみましょう。

この問題が解けるかどうかのポイントは、

  1. 適切に場合分けして数えることができるか
  2. 対称性を利用できるか
  3. 条件付き確率を理解しているか

といったところです。

完答したい問題です。苦手な人はしっかり復習しましょう。

※誤植やミスを見つけた方は,ぜひお知らせください。

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