[mathjax]
この記事には,久留米大学医学部推薦入試過去問の詳しい解説が載っています。
過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!
解答はすでにこちらの記事で示しております。
令和06年度(2024)久留米大学医学部推薦入試数学[1]
[1]基本だけど意外に手こずる?整数部分と小数部分
「どこかで見たような問題だし,楽勝だな」
そう思った人は多いと思います。ただ,意識しておかないと意外に手こずります。まずは解答を見てみましょう。どこで手こずるでしょうか?
\dfrac{3}{2\sqrt{13}-7}=& \dfrac{3(2\sqrt{13}+7)}{(2\sqrt{13}-7)(2\sqrt{13}+7)} \\
=& 2\sqrt{13}+7 \\
=& \sqrt{52}+7
\end{align*}
\(7 < \sqrt{52} < 8~\)より
\begin{align*}
7 +7 < \sqrt{52} +7 < 8 +7 \\
14 < \dfrac{3}{2\sqrt{13}-7} < 15
\end{align*}
よって,整数部分は \(14 \cdots \textrm{(答)}\) \\
小数部分は \( \left(2\sqrt{13}+7 \right) -14 =2\sqrt{13}-7 \cdots \textrm{(答)} \)
外の数字をルートの中へ。逆の発想は意識しないと難しい
どこにも問題はなさそうですが・・・。
前半の分母の有理化については大丈夫でしょう。
有理化したことで
\[
\frac{3}{2\sqrt{13}-7}=2\sqrt{13}+7
\]
となりました。問題はこの後です。次のように解いてしまって,困った人はいませんか?
\(3 < \sqrt{13} <4\)より,
\begin{align*}
6 < 2\sqrt{13} <8 \\
6+7 < 2\sqrt{13} +7 < 8+7 \\
13 < \frac{3}{2\sqrt{13}-7} < 15
\end{align*}
したがって\(\frac{3}{2\sqrt{13}-7}\)の整数部分は・・・13?それとも14?
はい,答が出ませんでしたね。これは受験生がよくやるミスですが,計算に問題はないため,何がいけないのかわからず,オタオタしてしまう人もいるようです。
誰だってミスはします。ただ,ミスが起きたときは,同じミスが起きないようにするためにはどうすればいいのか,しっかり考えましょう。
今回のミスはどこにあったかというと,\(3 < \sqrt{13} <4 \)とした後,すべての辺を2倍して\(6 < 2\sqrt{13} < 8 \)としたところです。
3と4の間なら差は1ですが,6と8の間だと差が2に開いてしまっています。すると,正確な値がわからなくなってしまうのです。
そこでどうするかというと・・・解答を見れば\(2\sqrt{13}=\sqrt{52}\)として\(\sqrt{52}\)がどのくらいの数かを調べるところからスタートしてます。その後の計算過程には掛け算するところがないので,差が1のままで最後まで計算することができ,答がわかりました。
これは簡単なようで意外と難しいものです。なぜならば,いつもの思考とは逆になっているからです。というのも,ルートの計算をするとき,\(\sqrt{8}\)を\(2\sqrt{2}\)にすることはあっても,逆に\(2\sqrt{2}\)を\(\sqrt{8}\)にすることはあまりありません。いつもとは逆になっているからこそ,気付きにくいのです。
無理数の大きさを見積もるときに「外の数字をルートの中に入れる」というテクニックを,「差を1のままで計算するため」という理由とともに押さえておきましょう。
どのように計算しても答は出せるが・・・
次は(2)について,この問題を解くためには,まず「整数部分が5である」という問題文から式を立てなければなりません。解答を見てみましょう。
\begin{align*}
5 \leqq \dfrac{2}{a-\sqrt{7}} < 6
\end{align*}
これは実数を,「(整数部分)+(小数部分)」とみたときに,小数部分が0以上1未満であることを用いています。何ということはない式なのですが,ド忘れしてしまう受験生もいます。気をつけましょう。
次に注意するのは,この不等式の解き方です。
まずは正解から。
5 \leqq \dfrac{2}{a-\sqrt{7}} < 6
5(a-\sqrt{7}) \leqq 2 < 6(a-\sqrt{7}) \\
\dfrac13 +\sqrt7 < a \leqq \dfrac25 +\sqrt7 \\
0.333 \cdots +2.645 \cdots < a \leqq 0.4 + 2.645 \cdots
\end{align*}
何も難しいことは無いようですが,油断してはいけません。次のように計算してドツボにハマる人もいます。
\begin{align*}
5 \leqq \frac{2}{a-\sqrt{7}} < 6 \\
5 \leqq \frac{2(a+\sqrt{7})}{(a-\sqrt{7})(a+\sqrt{7})} < 6 \\
5 \leqq \frac{2(a+\sqrt{7})}{a^2-7} < 6 \\
5(a^2-7) \leqq 2(a+\sqrt{7}) < 6(a^2-7) \\
\cdots ???
\end{align*}
まあ計算自体に間違いはないので,これでも答えは出るでしょうが・・・無駄に時間がかかりそうです。
こう計算してしまった原因はどこにあるのでしょうか?
それは「分母にルートがあったら有理化する」という思い込みです。
もちろん,最終的な答の分母に無理数があれば,分母を有理化した方がいいと思います。
しかし,まだ答を求めている途中であれば,必ずしも有理化する必要はありません。有理化して計算するか,有理化しないで計算するか,簡単にできそうな方を選べばいいことです。
でもその検討をせずに,「とりあえず有理化!」と条件反射のように進めてしまうと,余計な時間を使ってしまうことがあります。こういうところが,考えて解いている人と考えずに解いている人の違いです。注意しましょう。
最後の難関,ルートの値がわからない・・・
無事,計算もできて,あとは不等式を満たす整数\(a\)を求めるだけですが・・・
これを満たす整数は\(3\)のみであるから\(a=3.\)
このとき
\begin{align*}
\dfrac{2}{a-\sqrt{7}}=& \dfrac{2}{3-\sqrt{7}} \\
=& 3+\sqrt7
\end{align*}
であり,その小数部分は
\begin{align*}
(3+\sqrt7)-5 =\sqrt7 -2 \cdots \textrm{(答)}
\end{align*}
さらっと書いていますが,途中で\(\sqrt7 =2,64575 \cdots \)を使っています。しかしこれを覚えている受験生はそういないでしょう。ここで断念した人もいたはずです。
ではこの問題は,\(\sqrt7\)の値を覚えていなければ解けないのでしょうか?
そうではありません。知らないことであっても,答えを導くためにできることは手を尽くしましょう。
例えば,\(25 \times 25=625\)から\(2.5^2=6.25\)すなわち\(\sqrt{6.25}=2.5\)です。つまり\(\sqrt7\)は2.5よりも大きい数であることがわかります。同様にして,\(26 \times 26=676,~27 \times 27=729\)から\(2.6<\sqrt7<2.7\)とわかります。厳密ではありませんが,ここまでくれば答が\(a=3\)であると検討がつきます。
また,\(\frac13 +\sqrt7 < a \leqq \frac25 +\sqrt7\)を通分すると
\begin{align*}
\dfrac{2+6\sqrt7}{6} < a \leqq \dfrac{2+5\sqrt7}{5} \\
\dfrac{2+\sqrt{252}}{6} < a \leqq \dfrac{2+\sqrt{175}}{5}
\end{align*}
となりますので,これを使ってもいいでしょう。
\(\sqrt{252}\)を15より少し大きく16より小さい数,\(\sqrt{175}\)を13より大きく14より小さい数であることに気づくのは,さほど難しくありません。やってみてください。
知らない数であっても,大体どのくらいの数なのかは,見積もることができます。厳密に計算できなくても,答が絞り込めるところまでは頑張りましょう。
この問題のポイント
- 「整数部分が5である」を式にできるか
- 不等式をなるべく簡単に計算できるか
- 知らない無理数の値を,答が出せるくらいまで推測することができるか
といったところです。
序盤の計算問題なので完答したいところです。
落ち着いてミスなく得点しましょう。