この記事には,久留米大学医学部推薦入試過去問の詳しい解説が載っています。
過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!
解答はすでにこちらの記事で示しております。
令和06年度(2024)久留米大学医学部推薦入試数学[4]
[4]3次方程式の解法について確認する問題です
大問4は,3次方程式についての問題です。小問が3つあり,3つの解法を知っているかどうかが問われます。幅広く様々な問題に精通しておくことが重要です。
3次方程式の解を代入して求める
(1)はシンプルに解を求めよ,という問題です。3次以上の方程式,いわゆる高次方程式を解くためには,とりあえず一つ解を見つけることになります。解の公式などを使うわけではなく,解を予想して代入してみて,解かどうかを確かめる,ということです。
「そんなの偶然に頼っているみたいで不安だ。簡単ではない数字だったら,見つからないこともあるかもしれないじゃないか・・・」
そう思うのは無理もありません。
それに対する答えは,後ほどお伝えします。
まずは,「3次方程式の解を求めよ」というタイプの入試問題の大半が,\(\pm 1,~\pm2,~\pm3~\)あたりを代入すれば見つかることが多い,ということを知っておきましょう。
解\(x=\alpha~\)が見つかったら,左辺は\((x-\alpha)\)で割り切れることが分かるので,因数分解しましょう。
(1) \(2x^3+3x^2-1=0\)より
\begin{align*}
(x+1)(2x^2+x-1)=& 0 \\
(x+1)^2(2x-1)=& 0 \\
∴ x=-1,~\frac12 \quad \cdots \textrm{(答)}
\end{align*}
\begin{align*}
(x+1)(2x^2+x-1)=& 0 \\
(x+1)^2(2x-1)=& 0 \\
∴ x=-1,~\frac12 \quad \cdots \textrm{(答)}
\end{align*}
\(x=-1~\)が解であることは,代入すればわかります。あとは組立除法を用いるなどして因数分解すれば解けます。簡単ですね。
せっかくですから,先ほどの疑問についてお答えいたしましょう。
「代入する値が1や2や3なら見つかるかもしれない。でももっとめんどくさい数字だったら?例えば\(17\)とか\(\frac{5}{7}\)だったら?そんなの代入して見つけるのは不可能ではないか?」
確かにそうですね。
でも,解が有理数解であれば,推測することは可能です。
以下のことを知識として持っておきましょう。
今回の問題でいえば,方程式は\(~2x^3+3x^2-1=0~\)なので,有理数解は\(~\pm \frac{1\text{の約数}}{2 \text{の約数}}\)の中にある,とわかります。
そこで,解は\(~\pm 1,~\pm \frac12~\)の中にあると考えて,それを代入してみればいいのです。今回の答えは\(~x=-1,~\frac12~ \)ですから,確かにそうなってますね。
これを使えば,有理数解ならば見つけることができます。ぜひ使いこなしましょう。
共通解を文字でおいて連立する
(2)は,共通解問題です。解法はほぼ決まっていて,共通解を文字でおき,連立方程式として解くことになります。解答を見てみましょう。
(2)~ 2つの方程式の共通解を\(\alpha\)とおくと \begin{align*} \begin{cases} \alpha^3+3\alpha^2+3k\alpha+1=0 \cdots [1]\\ \alpha^2+2\alpha +k=0 \cdots [2] \end{cases} \end{align*} \([2]\times 3\alpha – [1]\)より \[ 2\alpha^3+3\alpha^2-1=0 \] (1)より \(~\alpha=-1, \frac{1}{2}.\)
\(\alpha=-1~\)のとき,\([2]\)より \(~k=1.\)
\(\alpha=\frac12~\)のとき,\([2]\)より \(~k=-\frac{5}{4}.\)
よって
\(\qquad\)\(k=1~\)のとき 共通解は\(~x=-1. \quad \cdots \textrm{(答)} \)
\(\qquad\)\(k=-\frac{5}{4}~\)のとき 共通解は\(~x=\frac12 \quad \cdots \textrm{(答)} \)
\(\alpha=-1~\)のとき,\([2]\)より \(~k=1.\)
\(\alpha=\frac12~\)のとき,\([2]\)より \(~k=-\frac{5}{4}.\)
よって
\(\qquad\)\(k=1~\)のとき 共通解は\(~x=-1. \quad \cdots \textrm{(答)} \)
\(\qquad\)\(k=-\frac{5}{4}~\)のとき 共通解は\(~x=\frac12 \quad \cdots \textrm{(答)} \)
\(x=\alpha~\)とおくことで,\(\alpha~\)と\(~k~\)についての式が2つできることになります。ですから,\(\alpha~\)も\(~k~\)も求めることができる,と考えましょう。
今回の問題は,2つの式のうち1つが(1)で解いた方程式と同じ形になっていますので,計算がスムーズに進められますね。
係数に虚数が含まれている方程式の解法
(3)の問題は,係数に虚数が含まれている方程式の解法についての問題です。
(3) 与えられた方程式の負の実数解を\(\beta\)とおくと \[ \beta^3+(3+i)\beta^2+(3k+2i)\beta +1+ki=0 \] 虚数単位\(~i~\)について整理して \[ (\beta^3+3\beta^2+3k\beta+1)+(\beta^2+2\beta+k)i=0 \] \(\beta^3+3\beta^2+3k\beta+1~\)と\(~\beta^2+2\beta+k~\)はともに実数であるから \begin{align*} \begin{cases} \beta^3+3\beta^2+3k\beta+1=0 \\ \beta^2+2\beta+k=0 \end{cases} \end{align*} (2)より \[ (k,~\beta)=(1,~-1),~(-\frac{5}{4},~\frac12) \] \(\beta~\)は負の実数なので \(~k=1 \quad \cdots \textrm{(答)} \) \\ このとき方程式は \begin{align*} x^3+(3+i)x^2+(3+2i)x+1+i=0 \\ ∴ (x+1)^2(x+1+i)=0 \end{align*} よって方程式の解は \[ x=-1,~-1-i \quad \cdots \textrm{(答)} \]
負の実数解をもつ,とあるので,その実数解を文字でおきましょう。
すると,実数\(~\beta~\)と実数\(~k~\),そして虚数単位\(~i~\)が含まれている式になります。
それを実数部分と虚数部分に整理して,右辺が\(~0~\)であることから,実部と虚部がともに\(~0~\)である,と2つの式ができます。
あとは連立方程式を解けばOK,ということです。この連立方程式が(2)で解いた連立方程式と同じ形であることから,計算は省略することができます。よくできた問題ですね。
以上の小問3つを通して,重要な解法3つを確認できたことになります。いずれも重要な解法ですので,しっかり理解して使いこなせるようになりましょう。
この問題のポイント
振り返ってみましょう。
この問題が解けるかどうかのポイントは、
- 高次方程式の解き方が身についているか
- 共通解問題の解法を使えるか
- 係数に虚数が含まれている方程式であることに気づけるか
※誤植やミスを見つけた方は,ぜひお知らせください。