令和04年度(2022)久留米大学医学部推薦入試数学過去問の解説授業(1/5)

推薦入試

この記事には,久留米大学医学部推薦入試過去問の詳しい解説が載っています。

過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!

解答はすでにこちらの記事で示しております。

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令和04年度(2022)久留米大学医学部推薦入試数学[1]

[1]2乗するよりも大切なことがある!三角関数の方程式

大切なことは”三角比は連立できる”と知っておくこと

三角関数を学んでだんだん解けるようになってくると、方程式や不等式を解くのはそう難しくないように思えてきます。よく見る定番の手法をマスターしておけば、解けることが多いからです。

しかし,次のように進めてしまい,解けなくなった人はいるのではないでしょうか。

\( \sin{2x}=2\sin x \cos x \)より \begin{align*} \sin x +\frac{\sqrt 3}{3}\cdot 2\sin x \cos x =1 \\ \sin x \left( 1 +\frac{2\sqrt3}{3}\cos x \right)=1 \\ \cdots ? \end{align*}

\( \sin{2x} \)を見て倍角の公式を思いついたり,左辺を\(\sin x \)でくくったりすることを思いつくことは,悪いことではありません。よく使う手法ですし,それで解けることも多いでしょう。

でもそれらを知っていればOK,というわけではありません。

三角比の方程式では,もっと大切なことがあります。それは, \[ 三角比の方程式は,連立して解くことができる\] ということを知っておくことです。

例えば,\( \sin x + \cos x =1\)という式を見て,何を考えますか?

「2乗すれば解けるんじゃないですか?」

その通りです。どの教科書にもよく載っている問題で,2乗すると鮮やかに解けます。

しかしそれだけでは足りないのです。

与えられた式を「\( \sin x \)と\( \cos x \)の式である」と見れば,「公式\(\sin^2 x +\cos^2 x =1\)と連立すれば解けること」に気付くことができます。

このことは,教科書や参考書に明記していないので,意識していない人は多いです。

でもそこまで意識しておかなければ,今回の問題には余計な時間がかかってしまうでしょう。

解答を見てみましょう。

(1) \( \quad \sin x+ \frac{\sqrt{3}}{3}\sin {2x}=1 ~\)より \begin{align*} \sin x+ \frac{1}{\sqrt{3}}\cdot 2\sin {x} \cos x=1 \\ \sin x \cos x =\frac{\sqrt3}{2}(1-\sin x ) \end{align*} \(\sin x=0\)とすると成り立たないので\(\sin x \neq 0.\) \\ 両辺を\(\sin x\)で割って \begin{align*} \cos x =\frac{\sqrt3}{2}\cdot \frac{1-\sin x }{\sin x} ~ \cdots [1] \end{align*}{} \( \sin^2 x +\cos^2 x =1~\)に代入して \begin{align*} \sin^2 x +\left( \frac{\sqrt3}{2}\cdot \frac{1-\sin x }{\sin x} \right)^2=& 1 \\ \sin^2 x + \frac{3}{4}\cdot \frac{(1-\sin x)^2 }{\sin^2 x} =& 1 \\ 4\sin^4 x +3(1-\sin x)^2 =& 4\sin^2 x \\ 3(1-\sin x)^2-4\sin^2 x (1-\sin^2 x)=& 0 \\ (1-\sin x ) \left\{ 3(1-\sin x)-4\sin^2 x (1+\sin x ) \right\}=& 0 \\ (1-\sin x ) (-4\sin^3 x -4\sin^2 x -3\sin x +3 )=& 0 \\ (1-\sin x )(1-2\sin x )(2\sin^2 x +3\sin x +3 )=& 0 \end{align*} \(2\sin^2 x +3\sin x +3 =0~\)を満たす実数\(~x~\)は存在しないので,\(\sin x = 1,~\frac12.\) \\ \( \sin x=1 \)のとき,\([1]\)より\( \cos x=0. \)よって\( x=\frac{\pi}{2}.\) \\ \( \sin x=\frac12 \)のとき,\([1]\)より\( \cos x=\frac{\sqrt3}{2}. \)よって\( x=\frac{\pi}{6}.\) \\ したがって,\( x=\frac{\pi}{6},~\frac{\pi}{2}. \cdots \text{(答)} \)

\(\sin{2x}=2\sin x \cos x \)としたあとは,\(\sin x \)と\( \cos x \)の式になっています。ですから,そこからは連立することを考えればいいのです。

(2)も見てみましょう。

(2)\( \quad \begin{cases} \sin x + \cos y = \frac{\sqrt{3}}{2} \\ \cos x + \sin y = \frac12 \end{cases} \) より \begin{align*} \cos y=& \frac{\sqrt3}{2}-\sin x \cdots [2]\\ \sin y=& \frac12-\cos x \cdots [3] \end{align*} \( [2],~[3]\)を\( \sin^2 y +\cos^2 y =1 \)に代入して \begin{align*} \left( \frac12-\cos x \right)^2 +\left( \frac{\sqrt3}{2}-\sin x \right)^2=& 1 \\ 1-\sqrt3 \sin x -\cos x =&0 \\ 1-2\sin \left( x+\frac{\pi}{6} \right) =&0 \\ \sin \left( x+\frac{\pi}{6}\right) =& \frac12 \end{align*} \( \frac{\pi}{6} \leqq x+\frac{\pi}{6} < \frac{13\pi}{6} \) より \begin{align*} x+\frac{\pi}{6} =& \frac{\pi}{6},~\frac{5\pi}{6} \\ x=& 0,~\frac{2\pi}{3} \end{align*} \( x=0 \)のとき,\([2],~[3]\)より\( \cos y=\frac{\sqrt3}{2},~\sin y=-\frac12.\)
\(0 \leqq y < 2\pi\) なので\( y=\frac{11\pi}{6}. \)
\( x=\frac{2\pi}{3} \)のとき,\([2],~[3]\)より\( \cos y=0,~\sin y=1.\)
\(0 \leqq y < 2\pi\) なので\( y=\frac{\pi}{2}. \)
したがって \( (x,~y)=\left( 0,~\frac{11\pi}{6} \right),~\left( \frac{2\pi}{3},~\frac{\pi}{2} \right) \cdots \text{(答)}\)

どうですか?連立する意図を感じるでしょう?

もちろん,2つの式をそれぞれ両辺2乗して解くこともできますが,途中で方向性を見失ってしまった人もいると思います。そんなことにならないように,とにかく”連立して解ける”ということを覚えておきましょう。

この問題のポイント

振り返ってみましょう。

この問題が解けるかどうかのポイントは、

  1. 三角比の方程式を解くための公式・手法を一通り知っているか
  2. 三角比の方程式は,結局連立すれば解けることを知っているか

です。1番目は知っていても,2番目を意識していなかった人は多いと思います。これを機会に,三角比の方程式を解き直してみて下さい。

 

※誤植やミスを見つけた方は,ぜひお知らせください。

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