この記事には,久留米大学医学部推薦入試過去問の詳しい解説が載っています。
過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!
解答はすでにこちらの記事で示しております。
令和3年度(2021)久留米大学医学部推薦入試数学[2]
確率の最大値問題,まずは大まかな流れを確認しておこう
この問題は,袋から球を繰り返し取り出し,確率が最大となるのは白球が何個のときかを調べる問題です。
よくある問題ではありますが,前半は取り出した球を元に戻す場合,後半は取り出した球を元に戻さない場合,と二つの問題を並べてあるところが特徴です。
まずは確率を計算します。そのあと,\(k\)回の確率と\(k+1\)回の確率,つまり隣同士を比較します。その式を利用し,確率が最大となる\(k\)の値を求める,という流れになります。
どの問題でもほぼ同じですので,しっかりマスターしておきましょう。
取り出した球を元に戻す場合
1回の試行で白球を取り出す確率は\(\frac35,~\)赤球を取り出す確率は\(\frac25\)であるから
\begin{align*} p_k=& _{20}\textrm{C}_{k}\left(\frac35 \right)^k \left(\frac25\right)^{20-k} \\ =&\frac{20!}{k!(20-k)!}\cdot \frac{3^k \cdot 2^{20-k}}{5^{20}} \end{align*} したがって \begin{align*} \frac{p_{k+1}}{p_k}=&\frac{20!}{(k+1)!(19-k)!}\cdot \frac{3^{k+1} \cdot 2^{19-k}}{5^{20}} \cdot \frac{k!(20-k)!}{20!}\cdot \frac{5^{20}}{3^k \cdot 2^{20-k}} \\ =&\frac{3(20-k)}{2(k+1)}\\ =&\frac{-3k+60}{2k+2} \quad \cdots \textrm{(答)} \end{align*}前半は,取り出した球を元に戻す場合です。同じ試行を繰り返すので,反復試行の確率ですね。
注意するのは,\( _{20}\textrm{C}_{k}~\)をかけ忘れないこと。
「白玉が\(~k~\)回出る」事象のパターン数は,順序を考えると\( _{20}\textrm{C}_{k}~\)通りあります。
この組合せは,階乗の記号を用いて\( _{20}\textrm{C}_{k}=\frac{20!}{k!(20-k)!}\)と表せます。意外に苦手としている人も多いのですが,教科書に載っている基本事項ですので覚えておきましょう。
そのあとは,\(p_k~\)と\(~p_{k+1}~\)を比較するため,\(\frac{p_{k+1}}{p_k}~\)を計算しておきます。約分できるところを間違えなければ,計算は簡単なので正解にたどり着けるでしょう。
ただし,問題文の注意書きを読み落とさないように。
「分母と分子が降べきの順に展開された1項の分数式で表せ。」とありますので,分母と分子ともに,括弧を展開した形にしなければなりません。
ここで点数を落とすのは悔しいですよね。答えが出ても,その答えを解答欄に入れて間違いが無いかどうか調べましょう。
隣同士の確率を比較するため,不等式をつくる
求めた\(~\frac{p_{k+1}}{p_k}~\)を\(~1~\)より大きいとした不等式\(~\frac{p_{k+1}}{p_k}>1~\)を使って,\(p_k~\)と\(~p_{k+1}~\)を比較します。
\(\frac{p_{k+1}}{p_k} > 1 ~\)を満たす\(~k~\)の値は,\(p_k < p_{k+1}~ \)を満たす,というところが大事なところです。隣同士を比較していますね。
あとは,\(0 \leqq k \leqq 11~\)のときと\(~12 \leqq k \leqq 19~\)のときを丁寧に考えれば,答えが出ます。
取り出した球を元に戻さない場合
全事象をどのように数えるか確認しよう
確率を計算するときの間違いの一つに,分母の事象と分子の事象が一致していないことがあります。
例えば,分母は順序まで考えて「並べて」いるのに,分子は順序を考えていなくて「選んで」いる,などのミスです。
分母は同様に確からしい全事象の数となりますが,分子はその全事象の中から対象となる事象の数となります。注意しましょう。
後半の問題では,取り出した球を戻さずに20個取り出します。これを「30個のうち20個を並べる」と考えると,全事象は\(~_{30}\textrm{P}_{20}~\)通りとなります。こう考えた場合は,並び順も考慮しているのですから,分子もまた,並び順を考慮して数えなければなりません。
しかし,順序を考慮せず,全事象を「30個のうち20個を取り出す」と考えても解くことができます。この場合は全事象は\(~_{30}\textrm{C}_{20}~\)通りとなり,分子も並び順を考慮せず,組合せで数えることになります。
どちらで考えても解くことはできますが,分母と分子は同じように考えて解きましょう。
この後は,前半の問題と同じです。
確率の最大値を求める問題は,今回のように\(~\frac{p_{k+1}}{p_k} > 1~\)を使っても解けますが,\(p_{k+1}-p_k > 0~\)を使っても解くことができます。どちらにしても,隣同士を比較する不等式を使うところがポイントです。
この問題のポイント
振り返ってみましょう。
この問題が解けるかどうかのポイントは、
- 球を元に戻す場合と戻さない場合に注意する
- 分母と分子の数え方を一致させることができる
- 隣同士の確率を比較する不等式をつくることができる
といったところです。定番の手法ですから,完答できるように復習しておきましょう。
※誤植やミスを見つけた方は,ぜひお知らせください。