[mathjax]
この記事には,久留米大学医学部の過去問の詳しい解説が載っています。過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!
解答はすでにこちらの記事で示しております。
平成29年度(2017)久留米大学医学部推薦入試数学[1]
キーワードは「2変数関数」
この問題は、条件式が与えられたときに、関数の最大値と最小値を求める問題です。
「\( xy \)の最大値と最小値を求めよ。」とありますので、\( ~x~ \)と\( ~y~ \)の2つの変数で表される、いわゆる2変数関数の最大最小問題となっています。
この「2変数関数」という言葉は、教科書には載っていません。聞いたことのない受験生もいるかもしれません。
しかし教える側の人間で知らない人は、おそらくいないと思います(たぶん)。
2変数関数の問題は、いろいろな分野で顔を出します。例えば、数Ⅰの教科書では2次関数のところで出てくるし、数Ⅱの教科書では図形と方程式のところや三角関数のところででてきます。
そのため、知識が頭の中にバラバラに入っていて、うまくつながっていない人も多いようです。
そんな人はこの、「2変数関数」のキーワードで整理し直すことをおすすめいたします。
教科書だけでは解けない!?
教科書にも載っている、よくある2変数関数の最大最小問題として、次のような問題が挙げられます。
(例2)\(x^2+y^2=1~ \)とする。\( x+y \)の最大値と最小値を求めよ。
問題を解くために使われている解法はそれぞれ次の通りです。
(例1)は主に、\( y=1-x~ \)として\( ~xy~ \) を\( ~x~ \) のみの2次関数にする、いわゆる「1文字消去」。
(例2)は主に、\(x^2+y^2=1~ \)の中心\( (0, \ 0) \)と直線\( ~x+y=k~ \)との距離を調べる、 つまり「条件式と関数をグラフで視覚化する」方法。
この2つの解法は、いろいろなところで目にする汎用性が高い解法なので、知っている受験生は多いでしょう。
しかし、久留米大学医学部推薦入試で出題されたこの問題(平成29年度の1番)には、上記2つの解法は使えません。
ということは、教科書に載っている上記2つのタイプの問題が解けるだけでは対応できないので、教科書には載っていない、もう一歩踏み込んだ問題が解けるようになっておかなければならない、ということになります。
ここまで知っておくべき!2変数関数の解法
それでは推薦入試の問題に戻りましょう。
与えられた条件式は対称式です。対称式とは、\( x \)と\( y \)を入れ替えても変わらない式のことで、和と積の形で表されることは知っているでしょう。そこで、まず和\( ~x+y~ \)と積\( ~xy~\)をそれぞれ\( ~u,v~ \)と置き換えています。これは、条件式をグラフで表したいけれどもそのままでは表しにくいので、文字を置き換えることで\( ~uv~ \)平面に表そうとしているのです。この式変形については、さほど難しくないので、理解できるだろうと思います。
しかし、文字の置き換えを行ったときに、必ず注意すべきことがありませんでしたか?
そう、範囲の確認です。
高校の先生にも予備校の先生にも、「置き換えをしたときは、必ずその範囲を調べなさい」と口を酸っぱくして言われているはずです。
さて、では今回置き換えた\( ~u~ \)と\( ~v~ \)について、範囲を示せるでしょうか。
『\( ~u=x+y~ \)だから・・・\( ~u~ \)はすべての実数だな。\( ~v=xy~ \)だから・・・あれ?\( ~v~ \)もすべての実数?・・・』
こんな風に、2つの文字を1つずつ調べていってはいけません。\( ~u~ \)と\( ~v~\)について同時に調べなければならないのです。そしてこれは、一度きちんと説明を受けていないと理解しにくい、やや高度な考え方です。
ポイントは、\( ~u=x+y~ \)と\( ~v=xy~ \)から、2次方程式\(~t^2-ut+v=0~\)が実数解\( ~x,y ~\)をもつ、というところが理解できるかどうかです。
1と2を解にもつ\( ~x~ \)についての2次方程式は、\( ~(x-1)(x-2)=0~ \)となりますよね。同様に考えれば、\( ~x~ \)と\( ~y~ \)を解にもつ\( ~t~ \)についての2次方程式は\( ~(t-x)(t-y)=0~ \)となります。これを展開すると、 \[ \begin{align*} (t-x)(t-y)=&0 \\ t^2-(x+y)t+xy=&0 \\ t^2-ut+v=0 \end{align*} \]
となります。これで、2次方程式\(~t^2-ut+v=0~\)が実数解\( ~x,y~ \)をもつ、ということが理解できましたね。
あとは簡単。2次方程式が実数解を持つ条件は、判別式が0以上であることなので、\(~u~\)と\(~v~\)についての不等式が完成します。その不等式が示す領域を\( ~uv~ \)平面で確認し、\( ~v=\left( u-\frac{3}{2} \right)^2 -\frac{9}{4}~ \)もグラフにして\( ~v~ \)の最大値と最小値を調べるだけです。
[1]と\(~v=\frac{1}{4} u^2~\)の交点の座標は\(~(0, 0), (4, 4)~\)であるから,[1], [2]をともに満たす領域は下図の通り。
したがって,\(~xy=v~\)のとりうる値の範囲は \begin{eqnarray*} -\frac{9}{4} \leqq xy \leqq 4 \qquad \qquad \qquad \cdots (答) \end{eqnarray*}
この問題のポイント
振り返ってみましょう。
この問題が解けるかどうかのポイントは、
- 対称式であることを見抜いて、\( ~u=x+y,v=xy~ \)と置き換えることができる。
- \( ~x,y~ \)を解にもつ2次方程式を作ることで、\(~u,v~ \)についての不等式を作ることができる
- それらを\( ~uv~ \)平面にグラフ化することで、最大値と最小値を調べることができる。
の3点です。このうち、1と3ができている受験生は比較的多いのですが、2ができない受験生は少なくないと思います。ちなみに2で求めた条件を、「実数解条件」といいます。きちんと理解し、使えるようになっておきましょう。