[mathjax]
この記事には,久留米大学医学部の過去問の詳しい解説が載っています。過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!
解答はすでにこちらの記事で示しております。
平成30年度(2018)久留米大学医学部推薦入試数学[4]
元ネタは,いわゆる「モンティーホール問題」
この問題を見たとき,私はビックリしました。ある有名な問題が元ネタとなっていて,知ってる人であれば簡単だったからです。
もちろん有名とはいっても,数学についての読み物などによく載っている話である,というレベルです。老若男女誰もが知っている,というレベルではありません。
ですから,元ネタを知っているかどうかで,かなり差が出てしまう問題だと思います。
受験勉強ばかりでなく,日頃から本を読んだりする習慣も大切だ,という大学からのメッセージかもしれません。
直感的には2分の1に見えるけれども・・・
このゲームでは,あなたが1枚のカードを選んだ後,親がAのカードを1枚見せるので,あなたの選んだカードと親が伏せたカードのうちどちらかがジョーカーです。勝つためにはジョーカーを選ばなければなりませんが,ここでカードを交換するかどうか?が問題です。
直感的には,残っているカードが2枚なので確率は2分の1だ,と思ってしまうのですが,それが間違っている,というのがこの問題の面白いところです。
ポイントは,親はジョーカーがどこにあるか知っていて,Aのカード1枚を見せた,というところです。親はランダムにカードを見せたわけではないのです。
答え:(b)親が裏返しに置いたカードに交換した方が有利である
[理由] 3枚のカードを\(A_1,~A_2,~J\)とする。私はこのうちから1枚を選ぶので,その時点でどのカードを選ぶかは\(\displaystyle \frac13\)の確率である。
次に,親が開いて見せるカードについて考える。親は残りの2枚のカードを手元にとり,その中から\(A\)を1枚表向きにするので,残っている2枚のカードが何かをわかっていることになる。
私が\(A_1\)または\(A_2\)を選んでいるとき,親は残りの2枚から必ずもう一方の\(A\)を開いて見せるので,このときの確率は1である。もちろん,机に置かれた裏返しのカードは\(J\)である。
私が\(J\)のカードを選んでいるとき,親は残りの2枚のカード\(A_1,~A_2\)のどちらか一方を開いて見せる。このとき,\(A_1,~A_2\)のカードを開く確率はそれぞれ\(\displaystyle\frac12\)である。
結局,(私が選んだカード,親が開いて見せるカード)の組み合わせは,以下の4通りのみである。
- \(~(A_1,~A_2)\)
- \(~(A_2,~A_1)\)
- \(~(J,~A_1)\)
- \(~(J,~A_2)\)
1,\(~\)2の確率はそれぞれ\(\displaystyle\frac13 \times 1=\displaystyle\frac13 \)であり,3,\(~\)4の確率はそれぞれ\(\displaystyle\frac13 \times \displaystyle\frac12=\displaystyle\frac16 \)である。
したがって,私がカードを交換してゲームに勝つ確率は,1,\(~\)2の合計であるから\( \displaystyle\frac13 \times 2=\displaystyle\frac23, ~\)私が選んだカードをそのまま持っていてゲームに勝つ確率は,3,\(~\)4の合計であるから,\(\displaystyle\frac16 \times 2=\displaystyle\frac13 .\)
以上の理由より,カードを交換した方が有利である。
初めて読んだ人は,一度読んだだけでわかるでしょうか?自分で書いた文章ながら,やや不安です。
分かりにくかった人は,次の説明ではどうでしょうか。
3枚のカードから1枚を選んだ時点で,ジョーカーである確率は\(\displaystyle \frac13\)である。
その後,親が残りの2枚のカードから1枚を見せるのだが,親はカードを見て判断している。ということは,私が引いたカードがジョーカーである確率には何の影響も与えないので確率は\(\displaystyle \frac13\)のままである。よってカードは交換した方がよい。
Aのカード(つまり”外れ”のカード)が,親が持っている2枚のカードの中にあることは当然わかっていることです。それを1枚見せられたからと言って,確率は何も変わっていない,という説明です。
分かりにくければ,極端な状況で説明してみましょう。
カードが全部で1000枚あるとしましょう。ジョーカーは1枚だけです。ここから1枚のカードを引けば,ジョーカーである確率は1000分の1です。
親は残った999枚のカードを見ることができます。この中にジョーカーがある確率はもちろん1000分の999です。そして親は,ジョーカーではないカードを998枚表にしてあなたに見せます。そして残った手元の1枚だけを机に伏せます。
あなたの前には,あなたが最初に選んだカード,親が999枚の中から1枚だけ残したカード,の2枚がありますが,これでも確率2分の1に見えますか?
そう,外れカードがたくさんあることは分かっているので,親からそれを見せられても,確率には何の影響もないのです。
この問題のポイント
振り返ってみましょう。
この問題が解けるかどうかのポイントは、
- いわゆる「モンティーホール問題」を知っていたか
- 交換した方が確率が上がることを説明できるか
「モンティーホール問題」とは?
アメリカのテレビ番組「「Let’s make a deal」の司会者の名前がモンティーホールです。この番組は一般人参加型のショー番組で、その中で行われた次のようなゲームがありました。
- スタジオに3つの扉が用意される
- それぞれの扉の向こう側には、高級車またはヤギ(ヤギ!?)がいる。もちろん高級車は1か所だけ。2か所はヤギである。
- 司会者モンティーホールは「あなたが開きたい扉を選んでください。扉の向こうにあるものはあなたにプレゼントします。」と言ってゲームの参加者に扉を選ばる。
- モンティーホールは扉の向こう側を見て、選ばれなかった扉のうちの一つを開けてみせる。もちろん、その扉の向こう側にいるのはヤギである。
- ここでモンティーホールは「開ける扉は変更してもいいですよ。変更しますか?それともこのまま開けますか?」とゲームの参加者に尋ねる
- 参加者は、残った2枚の扉のうち1枚を開けて、その向こう側にある景品をもらう
私は番組を見たことはありませんので,細部は多少違うかもしれません。しかし、まさに今回の久留米大学医学部推薦入試の問題と全く同じ状況であることがわかるでしょう。
しかしそれにしてもはずれの景品がヤギって・・・どうやって持って帰るのだろうか(笑)。
この番組のことについて、あるコラムニストが雑誌の中で「扉を変更した方が当たる確率は2倍になる」と書いたところ、反論の投書が殺到してかなり話題になったのです。反論はもちろん「2枚の扉が残ったのだから、確率は2分の1だ」というもの。
おもしろいのは、大学教授、数学者からもたくさん反論が来たこと(それらの方々は、のちに過ちを認めたそうです)。大学教授ですら、直感的には間違ってしまうところが、この問題の面白いところですね。
この問題について学んだあなたは、もし似たような番組に出場する機会があったらぜひ扉を変更しましょう!ヤギが欲しい人以外は(笑)。