[mathjax]
この記事には,久留米大学医学部の過去問の詳しい解説が載っています。過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!
解答はすでにこちらの記事で示しております。
平成28年度(2016)久留米大学医学部推薦入試数学[5]
長文だが設定を正確に把握しよう
大問5は確率の問題です。問われているのは
- 問題文から正しく状況を読み取れるか
- 非反復抽出における確率を求めることができるか
- 区別する・区別しない,をきちんと見分けることができるか
です。 問題文がかなり長いものとなっています。 推薦・一般ともに久留米大学医学部の試験で長い文章が使われることは少なく,平成28年度試験の特徴といってもよいでしょう。 問題文が長くなっていても対応できるよう,文章の読解力を身に付けておきましょう。
区別するか,区別しないか,それが問題だ
生徒からの質問で多いのが 「区別するときと区別しないときがよくわからなくなります」 というものです。 そんなときは「確率なら原則区別しろ」と答えています。 例えば特殊なサイコロがあって,6つの面のうち5面が「1」,残り1面が「6」となっているとします。 出る目は「1」と「6」の2通りしかありませんが,だからといって「1」が出る確率を2分の1とはしないでしょう。 それはつまり,5つの「1」を区別しているのです。 確率の問題を解くときは,必ず区別すること,と覚えておきましょう。
問題文を読むと,25枚の紙から1枚ずつランダムに5回取り出す,と書かれています。元へ戻さないので,紙切れを1枚ずつ机に並べていくイメージです。 上記の解答は,5枚並べることを1セットで考えているので,分母が\(_{25}\rm{P}_5~\)となっています。 求めるのは\(~(1,~2,~3,~4,~5)~\)となる確率なので,すべて同じ香りがする紙の並べ方の総数を分子とします。 どの香りかで\(~5~\)通り,1つの香りについて紙の並べ方は\(~5!~\)通りなので分子は\(~5 \times 5!~\)となります。 5枚並べることを1セットで考えるのではなく,紙を1枚取り出すことを1回の試行とし,5回の試行を行う、と考えることもできます。その場合は,計算方法は以下のようになります。 \[ 1 \times \frac{4}{24} \times \frac{3}{23} \times \frac{2}{22} \times \frac{1}{21}=\dfrac{1}{10626} \] 1回目はどの紙が出てもいいので確率は1,その後は残った紙のうち,1回目に嗅いだ香りと同じ香りがする紙を引くことになります。 残った紙の枚数が試行のたびに減っていくこと,同じ香りの紙も試行のたびに減っていくことに注意すると,2回目は\(~\dfrac{4}{24},~\)3回目は\(~\dfrac{3}{23},~\)4回目は\(~\dfrac{2}{22},~\)5回目は\(~\dfrac{1}{21}~\)となります。
受験生がよくやってしまうミス。それは順序のミス
では(2)の解答を見てみましょう。
求めるのは,すべてが違う香りである確率です。1つの香りにつき5枚の紙があるので,5回引いた場合は\(~5^5~\)通りとなります。 ただし,5種類の香りについて,どの順序で引くかも考えるべきなので,分子は\(~5^5 \times 5!~\)となります。 この,\(~5!~\)を忘れる受験生は多いです。気をつけましょう。 忘れないコツは,常に分母が何だったかをチェックすることです。 今回の分母は\(_{25}\rm{P}_5,~\)つまりは並べているわけですから,あらゆる順序の並べ方を考えているはずです。 その中ですべてが違う香りとなる”並べ方”なので,順序は当然考えなければならないのです。
変化球?最後は確率の問題ではない
入試問題で”場合の数”と”確率”の両方を扱う場合,ほとんどの問題がまず”場合の数”を出題します。 それを受けて次に”確率”の問題を出題します。それが自然な流れだからです。 しかしこの久留米大学医学部の推薦入試で出題された問題はそれとは逆で,”確率”2問のあと,最後の3問目に”場合の数”を出題しています。 通常と違う順序のため,戸惑った受験生も多かったようです。 久留米大学はこのようにちょっと変わった出題の仕方をすることがあるので注意しておきましょう。
「さっきの問題で,どの香りを引くかで順序に注意しろ,と言われたのだけど,今回は順序を考えなくていいのかな・・・?」 そう疑問に思う人は多いでしょう。 しかし今度は”場合の数”であることに注意して問題文を見直してみましょう。
同じ香りがした回を()でひとくくりにして小さい方から順に左から並べ,()内の最も左側の数字が小さいものから順に()を左から並べて答えを表す。例えば,(1),(2,3,5),(4)であれば,\(~2\cdot 3\cdot 5~\)回目が同じ香りで,1回目と4回目はそれとはそれぞれ異なる香りがしたことを意味する。
5回嗅いだ香りのうち,ある香りが2回,それとは異なる香りが2回,そしてそのどちらとも異なる香りが1回するような答えの組合せは全部で何通りあるか,答えよ。
問題文にある”答え”とは何でしょうか。 それは,かっこと数字を並べたものです。(3)の条件に当てはまるものであれば,例えば次のようなものです。 \[ \begin{align*} (1),~(2,~3),~(4,~5)\\ (1,~5),~(2,~4),~(3) \\ \cdots \end{align*} \] これらの”答え”を見て,どの香りだったのかはわかるでしょうか。 もちろん分かりません。 なぜなら,何番目と何番目が同じ香りだったのかを示しているだけだからです。 ということは,香りを区別して,順序を考える必要はないということです。 “答え”には
同じ香りがした回を()でひとくくりにして小さい方から順に左から並べ,()内の最も左側の数字が小さいものから順に()を左から並べて答えを表す
というルールがあるため,例えば2回目と4回目が同じ香り,1回目と5回目が同じ香りだった場合,\(~(1,~5),~(2,~4),~(3)~\)と表し,それ以外の表し方はないことになります。 ということは,答えの組合せは何通りあるか,と問われたときに何を数えるのか。 それは,数字\(~1,~2,~3,~4,~5~\)のうちどの数字をペアにするのか,つまり5つの数字を,\(~1~\)個,\(~2~\)個,\(~2~\)個と3つの組に分ける方法を数えればよいことが分かります。 確率とは違い、場合の数ではこのように区別できない状況もありますので注意しておきましょう。
この問題のポイント
振り返ってみましょう。
この問題が解けるかどうかのポイントは、
- 長文を読み,設定を正確に把握できる
- 確率の問題は,すべて区別して考えることを理解している
- 場合の数の問題は,区別できないことがあることを理解している
といったところです。 場合の数と確率の分野は,よく考えて式を立てないといけません。 自分が立てた式の根拠を人に説明できるくらい,しっかりした考えをもって式を立てましょう。