この記事には,久留米大学医学部推薦入試過去問の詳しい解説が載っています。
過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!
解答はすでにこちらの記事で示しております。
令和3年度(2021)久留米大学医学部推薦入試数学[4]
隠れている不等式を探せ!実数解条件
この問題は,式変形だけなら簡単なのですが,隠れている不等式を見つけるところがポイントです。
ただし,よくある問題の形を少し変更してあるので,工夫が必要です。
式変形は簡単。あっさり解きましょう
ここについては説明はいらないでしょう。よくある式変形ですので,あっさり解いて欲しいところです。
2次方程式の実数解条件を用いる
ここがこの問題の最大のポイントです。
入試では時々見る問題ですが,経験したことがない受験生にとっては難しい部類の問題です。ぜひマスターしておきましょう。
「\(x,~-y~\)は\(~X~\)の2次方程式\(~X^2-sX-t=0~\)の解であり,」のところ,よく質問を受けます。詳しく説明しましょう。
これは,逆から考えるとわかりやすいと思います。つまり,\(x,~-y~\)を解にもつ2次方程式の1つが\(~(X-x)(X+y)=0~\)であることから,これを変形していきます。
\begin{align*} (X-x)(X+y)=0 \\ X^2-(x-y)X-xy=0 \\ X^2-sX-t=0 \end{align*}つまり,\(x,~-y~\)を解にもつ2次方程式の1つが,\(~X^2-sX-t=0~\)であることになります。
\(x,~-y\)を解にもつ2次方程式ができたら,あとは実数\(~x,~y~\)が存在することと2次方程式\(~X^2-sX-t=0~\)が実数解をもつことは同値なので,判別式を0以上として不等式を求めます。
この手の問題では,\(x+y=s,~xy=t~\)という形で出題されることが多いのですが,今回は\(x-y=s,~xy=t~\)となっています。本質的には変わらないのですが,戸惑った受験生も多いと思います。
難しく見えますが,\(x+(-y)~\)と見ることで,いつもの形と同じになります。
難しく見える問題であっても,このように少し見方を変えるだけで,見慣れた問題と同じであることに気付くことがあります。試験会場でこのような問題に出会っても,あせらずに考えてみましょう。
求めた条件式から領域を調べる
領域\(D~\)は図の通り。2曲線\(~s^2+2t=2,~s^2+4t=0~\)の交点は\( ~(\pm 2,~-1)~\)であるから,求める領域\(D~\)の面積は
\begin{align*} \int_{-2}^{2}\left\{ \left( -\frac12s^2+1 \right)-\left(-\frac14s^2 \right) \right\}ds =&\frac{|-\frac12-(-\frac14)|}{6}\left\{ 2-(-2)\right\}^3\\ =& \frac83 \quad \cdots \textrm{(答)} \end{align*}求めた2つの条件式,\(s^2+2t \leqq 2~ \)と\(s^2+4t \geqq 0~\)を満たす領域を,\(st~\)平面に表します。
領域は2つの放物線で囲まれた部分になるので,面積はいわゆる「6分の1公式」を使うと簡単です。
「6分の1公式」は,2つの放物線,あるいは放物線と直線で囲まれた部分の面積に使えます。使いこなしましょう。
この問題のポイント
振り返ってみましょう。 この問題のポイントは、
- 対称式を用いて,式を変形することができる
- 2次方程式の実数解条件を用いて,隠れている不等式をつくることができる
- 不等式が表す領域を調べることができる
- 2つの放物線に囲まれた部分の面積を求めることができる
といったところです。
少し難しいところもありますが,久留米医学部で何度か出題されている問題です。十分練習しておきましょう。
※誤植やミスを見つけた方は,ぜひお知らせください。