[mathjax]
この記事には,久留米大学医学部の過去問の詳しい解説が載っています。過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!
解答はすでにこちらの記事で示しております。
平成29年度(2017)久留米大学医学部推薦入試数学[2]
君は考えたことがあるか?3次方程式の解について
この問題は、実数係数の3次方程式の解についての問題です。
実数係数の3次方程式が出題されたときに、解が実数解なのか虚数解なのか、あなたは考えていますか?
様々な出題パターンはありますが、方程式だから解について問われるはずです。そこで押さえておきたいことは、解についてです。実数係数の3次方程式の解は、次のパターンしかありません。
- 実数解を3個持つ(重解を含む)
- 実数解を1個、2つの虚数解(互いに共役)を持つ
今回の問題を見れば、おそらく2のパターンであることが予想できますが、どちらにしても、少なくとも1個は実数解です。
ではその実数解は何でしょうか。
泥臭い!?代入して求める高次方程式の実数解
高次方程式の解を求めるときは、基本的に代入して探す、という泥臭い作業をしなければなりません。
では何を代入すれば解が分かるでしょうか。
何かしらの数を代入して解を探す入試問題が出題された場合、\(~\pm 1, \ \pm 2, \ \pm3 \ \)の6個のうちのいずれかであることがほとんどです。これ以外の数が答となることはなかなか見当たりません。
ところが、これが久留米の問題の嫌らしいところなのですが、この方程式の実数解は4です。3まで代入して諦めた人は、あと一つ代入すればよかったのです。
虚数解を求めるのは簡単
真面目に計算すると損をする!?割り算してから代入しよう
\( ~z=4~ \)さえ見つければ、因数分解した上で虚数解を求めることも難しくはないでしょう。このあと、\(~z^5-39z^2-54z-160~\)の実部を調べるために、\(z=4 \ \)のときと\(~z=\frac{-1 \pm \sqrt{23}i}{2}~\)のときについて計算することで、実部を比較することになります。
次のポイントは、\(~z=\frac{-1 \pm \sqrt{23}i}{2}~\)のとき,\(~z^5-39z^2-54z-160~\)をどうやって計算するか、です。もちろん代入すれば答えは出ますが、計算が面倒くさいことは目に見えています。 そこで使って欲しいのは、「割り算してから代入する」計算方法です。
解答を見て、\(z^5-39z^2-54z-160~\)を\( ~(z^2+z+6)~ \)で割っていることがわかるでしょうか。 これは、\(~z=\frac{-1 \pm \sqrt{23}i}{2}~\)を代入したときに0となる\( ~(z^2+z+6)~ \)で割っておくことで、代入したときに式が簡単になるように工夫しているのです。その結果は、2次式で割っているので、余りは高々1次式となります。 前もって割り算さえしていれば、実際に計算するのは最後の1次式のみ。これならば計算ミスもほとんどないでしょう。
計算から解放される!?もう3乗、4乗なんてしなくてもいい
この、「割り算してから代入する」計算方法は汎用性が高く、いろいろな場面で使えるものです。 この解法を授業で解説するとき、私はこんなことを言っています。 「この解法を知った君たちは、もう複雑な数の3乗や4乗を計算する必要はないのだよ。割り算をしてから計算すれば、必ず1次式になるのだから」 この解法がいかに重要か、を印象づけているつもりです。 あなたも今後、いろいろなところで使いましょう。
この問題のポイント
振り返ってみましょう。
この問題が解けるかどうかのポイントは、
- 3次方程式の解について考え、\( z=4~ \)が実数解であることを見つけることができる。
- 複雑な値を代入する前に、割り算しておくことに気付くことができる。
の2点です。計算面倒くさいなあ、と思ったら、割ってから代入することを考えて下さい。