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この記事には,久留米大学医学部一般入試過去問の詳しい解説が載っています。過去問を通して久留米大学医学部の数学について学べるように,授業のような解説にしています。これまで勉強してきたことを整理し、あなたの数学力をレベルアップしましょう!
解答はすでにこちらの記事で示しております。
平成30年度(2018)久留米大学医学部一般入試数学[2]
元になっているのは積分漸化式の問題
この問題の元になっているのは,いわゆる「積分漸化式の問題」です。積分漸化式の問題とは,積分の形を含んだ\(I_n\)が与えられ,\(I_n\)と\(I_{n-1}\)あるいは\(I_{n-2}\)との漸化式を求める問題です。
\(I_n\)として与えられるものは,例えば以下のようなものがあります。 \[ \displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\sin^n{x}dx,~ \displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\tan^n{x}dx,~\displaystyle \int_{0}^{1}x^n(1-x)dx,~\cdots \] 大半の問題が部分積分を用いて計算することになりますが,\( \displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\tan^n{x}dx \)だけは置換積分を用います。
\(n=1\)のときは簡単に求められます。
\begin{align*} f(1)=& \lim{\scriptstyle{c \to \infty}}\int_{0}^{c}e^{-x}dx \\ =& \displaystyle \lim{\scriptstyle{c \to \infty}} \left[-e^{-x} \right]_{0}^{c} \\ =& \displaystyle \lim{\scriptstyle{c \to \infty}} \left(-e^{-c}+1 \right) \\ =& 1 \cdots \text{(答)} \end{align*}
そのあと,部分積分を用いて計算しますが,\(-c^ne^{-c}\)の項が残ります。
ちょっと戸惑いますが,ここで出題者が極限をとった意味が分かります。見てみましょう。
\(I(n)=\displaystyle \int_{0}^{c}x^{n-1}e^{-x}dx \)とおくと, \begin{align*} I(n+1)=&\int_{0}^{c}x^{n}(-e^{-x})’dx \\ =&\left[x^{n}(-e^{-x})\right]_{0}^{c}-n\int_{0}^{c}x^{n-1}(-e^{-x})dx \\ =& -{c^n}e^{-c}+nI(n) \end{align*} \( \displaystyle \lim{\scriptstyle{c \to \infty}}c^ne^{-c}=0~\)であるから, \begin{align*} f(n+1)=& \displaystyle \lim{\scriptstyle{c \to \infty}}I(n+1) \\ =& \displaystyle \lim{\scriptstyle{c \to \infty}} \left\{ -{c^n}e^{-c}+nI(n) \right\} \\ =& n \displaystyle \lim{\scriptstyle{c \to \infty}} I(n) \\ =& nf(n) \end{align*} \[ \therefore \quad \frac{f(n+1)}{f(n)}=n \quad \cdots \text{(答)} \]
\(I_n\)のままだと \(-c^ne^{-c}\)の項が残りますが,\(f(n)\)は極限をとっているので \( \lim_{c \to \infty}-c^ne^{-c}=0\)となり,すっきりした漸化式ができます。
解法が見えなくても,代入して解くことはできる
もし,上記のような流れが見えなかったときはどうすればいいのでしょうか。あきらめるしかないのでしょうか。
いえいえ、それでも解く方法はあります。
\(f(2),~f(3)\)を求めて,\(f(1),~f(2),~f(3)\)と並べてみてください。すると,答えの予想はつくはずです。解法を思いつかなかったとしても,数列や整数の問題は\(n=1,~2,~3,~\)と代入してみることで気付くことはたくさんあります。記述式だと解答としては不十分ですが,久留米大学医学部一般入試は穴埋め形式です。答だけでも点数はもらえますので,諦めずに答を出しましょう。
え?\(f(2),~f(3)\)を計算するのは大変?
いやいや,部分積分はスパッと解く速算法がありますので,さほど時間はかかりません。速算法については・・・ここではなく,また別の機会にしましょう。
最後の問題はおまけみたいなもんですね。
したがって \begin{align*} f(n)=&(n-1)f(n-1) \\ =&(n-1)(n-2)f(n-2) \\ =&(n-1)(n-2)\cdots 2 \cdot 1 \cdot f(1) \\ =&(n-1)! \quad \cdots \text{(答)} \end{align*}
この問題のポイント
振り返ってみましょう。
この問題が解けるかどうかのポイントは、
- いわゆる「積分漸化式の問題」であることが見抜けるか
- 部分積分を使いこなせるか
です。特に部分積分はミスが多いので,速算法も含めて正確に早く解けるようになっておきましょう。